映画「グリーンブック」は実在の天才黒人ピアニストとイタリア系白人運転手が人種差別の色濃い米国南部を巡るコンサートツアーを描いた


以前から観たいと思っていた、第91回アカデミー賞受賞作の「グリーンブック」を観ました。

『グリーンブック』(Green Book)は、2018年制作の米国の実在の人物の逸話にもとづいたヒューマンムービーです。

この映画の主役は、ジャマイカ系黒人のクラシック系ピアニストであるドン"ドクター"シャーリーと、シャーリーの運転手兼ボディガードとして雇われたイタリア系白人トニー・ヴァレロンガです。

1962年に実際にあったアメリカ最南部を巡るコンサートツアーを描いた映画作品でした。

グリーンブックとは、1876年から1964年にかけて、ジム・クロウ法の時代に、自動車で旅行する黒人を対象として発行されていた旅行ガイドブックです。

ジム・クロウ法とは、黒人の一般公共施設の利用を禁止、制限した法律である米国南部諸州の州法の総称です。

グリーンブックの書名の由来は創刊者であるヴィクター・H・グリーンからきていました。


あらすじ

舞台は1962年のアメリカです。

トニー・“リップ”・ヴァレロンガはニューヨーク市のナイトクラブ「コパカバーナ」用心棒をしていました。

ある日、彼が働いているナイトクラブ「コパカバーナ」が改装工事のため一時閉鎖されてしまうため、その間トニーは仕事にあぶれてしまいます。

トニーは妻から来月の家賃が払えないと言われ、新しい仕事を探します。

イタリア系の仲間を通じて、運転手の仕事があると紹介されます。

黒人のクラシック系ピアニスト、ドン・シャーリーが、アメリカ中西部、ディープサウスを回る8週間のコンサートツアーの運転手を探していました。

トニーはドンの面接を受けます。

ドンは、トニーが問題解決に長けた男、つまりは腕っぷしの強さでは申し分の無い男であることを伝えられていました。

ドンは100ドルの報酬のかわりに、ただ運転手であるというだけでなく、ツアー中ドンが弾くピアノが予めきちんと用意されているかの確認から、食事の手配、靴を磨くことまで要求します。

トニーは、仕事は運転手だけで、125ドルを要求します。

結局、話は物別れになり、トニーは帰宅して妻の小言を聞くことになります。

しかしその夜、ドンから電話があり、トニーの妻と話しをさせてくれと言います。

妻はトニーにドンが条件を承諾したので、仕事を受けることにしたと伝えます

トニーは妻と子供2人の家庭を持っており、イタリア系社会の常として親戚も多く、いつも野球のテレビ観戦や食事の度に、トニーの家にたむろしていました。

トニーはドンとクリスマス・イブまでに自宅に帰るという約束をして、真新しいブルーの大型セダンに乗ってツアーに出発します。

ドンのレコードレーベルの担当者は、黒人の旅行者がモーテル、レストラン、給油所を見つけるためのガイドブックである「グリーンブック」1冊をトニーに渡します。

旅が始まるとすぐにドンとトニーは口争いを始めてしまいます。

ドンはトニーの粗野で品の無い行動を直すよう何度も注意しますが、トニーは反発し口答えばかりで、一向にその態度を改めません。

しかしツアーは進み、ある日トニーは会場外からドンがピアノを演奏するのを目の当りにします。

普段クラシックのピアノ演奏など、全く縁の無いトニーでしたが、ドンの演奏に心打たれます。

素晴らしい演奏に会場は万台の拍手でした。

ところが、ステージから下りたドンに対する彼の招待主と一般の人々から受ける差別的な扱いを、トニーは直接目にすることになります。

ツアー中、トニーは、階下でツアーに参加した2人の演奏仲間が女性たちと談笑しているのを、ドンがホテルのベランダから見下ろし、一人寂しくグラスを傾けているのを見かけました。

ドンが一人でバーへ出かけ、白人男性のグループに袋叩きにあっているのを、トニーは見つけて救い出します。

この差別的な南部の土地が黒人にとってどんなに危険な場所であるかを説き、ツアーの残りの間、トニーはドンに1人で外出しないように叱責します。

ドンは昼食を食べながら、トニーが妻に手紙を書いているのを目にします。

屈託のないトニーはドンにその手紙を見せますが、それは見たことをただ書いているだけの稚拙なものでした。

ドンはもっと相手が喜ぶような文面を考えて、トニーが妻に手紙を書くのを手伝ってあげます。

トニーはドンに、疎遠になった兄弟に手紙を書いたらどうだと言います。

しかし、ドンは自分がピアニストになり名声を得たことから、いつしか兄弟と疎遠になり、妻とも別れたことを話します。

南部ツアーの途中、ドンがYMCAプールで同性愛者の白人男性と一緒にいたところを警官に咎められ逮捕されます。

トニーはドンを引き受けに行きますが、留置場で丸裸で繋がれていたのを目にし、トニーは激怒します。

しかし、ドンを容易に釈放しようとしない警官に、一筋縄でいかないとみて、警官に賄賂を出し買収してなんとかドンを留置場から救い出します。

ドンはトニーが違法な方法をとったことに憤慨します。

その後、2人は車で移動中に、後ろからパトカーに停止を命じられ、日没後に黒人が外出していることは違法だと主張する傲慢な警官に取り押さえられてしまいます。

車から警官に引きずり出されたトニーは、トニーのヴァレロンガという名前からイタリア人だから半分ニガーだと言われ、かっとなって警官を殴ってしまいます。

2人は逮捕され留置場に放り込まれます。

ドンは彼の弁護士に電話したい旨を警官に伝え、その権利があると主張して、外と電話連絡を取ることに成功します。

しかしドンが電話したのは当時の司法長官ロバート・ケネディでした。

警察署長や警察官たちは、打って変わったように豹変して態度が変わり、殴られた警官が食って掛かるのを署長は怒鳴りつけます。

即刻2人は釈放されましたが、車の中でドンはこのようなことで友人を利用したのは恥ずべきことだとトニーに言います。

アラバマ州バーミンガムでのツアーの最終公演の夜、演奏するために招待されたカントリークラブでドンは物置のような楽屋に案内された挙句、レストランで食事することを拒否されます。

ドンは「このレストランで食事を取ることが出来ないのなら今夜、演奏はしない。」とオーナーに言い放ちます。

オーナーはトニーを片隅に誘い出し、100ドルを提示し「ドンを説得してくれ」と頼みます。

オーナーはトニーに対して、この仕事もどうせ金のためだろうと侮辱的な言い方をしたためトニーはオーナーを殴りかかります。

そこにドンが表れてトニーを押しとどめます。

ドンはトニーに「君が演奏しろというのなら今夜演奏する」と言います。

トニーは「こんなクソなところはやめよう」とクラブを後にします。

トニーはドンを黒人のためのブラックブルースクラブ「オレンジバード」で夕食を摂るために連れて行きます。

黒人でありながら、ドンの演奏会用の高級な装いは、そのクラブに集まっている客連中のラフな格好とあまりにかけ離れていたので、他の客たちの疑惑と好奇の視線を集めました。

2人はそれを無視して、カティサークと「今日のスペシャル」を頼むと、カウンター越しの黒人女性にオーダーします。

カウンターを一人でさばいていた黒人女性は白人と黒人のコンビからトニーに向かって「あなた、警官?」と訊きます。

トニーは「そんなことあるかい」と答えドンが世界一のピアニストであると伝えます。

すると、女性は「言葉より聴かせて」とステージのアップライトピアノを指し示します。

ドンはショパンの練習曲作品25-11を静かに弾き始めます。

それまでざわついていた客たちは、まるで聞いたことのないようなピアノ演奏の音色に思わず振り返り、唖然とした顔をドンに向けます。

ピアノ演奏は次第に高まり、目にも止まらぬ魔法のような連打となり、圧倒的な音量で客連中をとりこにします。

演奏が終わると客は大拍手をもって絶賛します。

店のバンドがステージに上がりブルースを奏で始めると、ドンも合わせてアドリブを返し、店の中は皆が沸き立ち、あるものは踊り始めます。

トニーとドンはクリスマスイブまでに家に帰ろうと次第に雪が降り始めた中、家路を北に急ぎます。

途中で2人は警察官に止められますが、警官は彼らのタイヤのパンクを知らせ助けてくれました。

その後、さらに雪が激しく降り始め、トニーは眠気と戦いながら「モーテルで休ませてくれ」と言います。

ドンは「あと少しだ」と励まします。

そしてNYに帰って来た車を運転していたのはドンでした。

ドンは後席で眠るトニーの肩をゆすり、自宅へ着いたと知らせます。

ドンはトニーを自宅前で降ろし、トニーが家族に会っていってくれというのにも関わらず、ドンは笑みを浮かべメリークリスマスと言って帰っていきます。

ドンが帰宅し、豪奢な部屋を見まわします。

執事が「荷物をほどきましょうか?」と訊くと「いや今夜は家に帰れ」と促し、執事は微笑んで「メリークリスマス」と挨拶します。

トニーの家では帰宅したトニーに皆が「どんなことがあったのか」と話しをせかします。

1人が「あのニガーはどうだった?」と言うとトニーは「その言い方はやめろ」と諭します。

その姿を見てトニーの妻ドロレスは、トニーが旅の前と後では変わったことを知り、微笑みます。

8週間の旅で夫の黒人に対する偏見は消え、まるで人が変わってしまったのでした。

旅立つ前に時計を預けた質屋の夫婦が「トニーの親戚に御呼ばれした」とパーティーを訪ね、一同は歓迎して迎えます。

そしてドアを閉めようとしたトニーがふと気付き再びドアを開けると、そこにはシャンパンボトルを持ったドンが立っていました。

トニーは喜んで2人は抱きあいます。

トニーはダイニングにいる親戚一同に「紹介する、ドクター・ドン・シャーリーだ」と紹介します。

すると親戚一同は一瞬固まるも「彼の席を作れ!」と歓迎の意を表します。

そしてトニーはドンに妻ドロレスを紹介し、ドロレスは挨拶の抱擁をします。

そしてドロレスはドンの耳元で「手紙をありがとう」とお礼を言います。

ドンは少し驚き、微笑んで、もう一度挨拶の抱擁をします。