バッテリー点検の比重測定


バッテリー液の比重によって、バッテリーの充電状態が分かると言われます。

「比重」とは、バッテリー液に関わらず、液体については「水と比較した場合の密度の比」を表す言葉で、簡単に言うと「同じ体積での重さが水の何倍なのか?」を示します。

水の重さは1リットル当たり1kgですが、比重が1.0であれば水と同じ重さです。

バッテリー液は濃硫酸を水で薄めた希硫酸ですが、硫酸の比重は96%の濃硫酸で1.831、25%の希硫酸では1.175となります。

バッテリー液に使われる希硫酸の比重は気温や放電状態にもよりますが、満充電時で1.28、完全放電時で1.12程度と言われており、満充電時の濃度は30~40%、放電時は15~20%程度となるようです。

バッテリーの比重測定は、満充電後に行います。

※バッテリーの使用中(充電中)には、酸素ガス・水素ガスが発生しており、引火爆発の危険がありますので、火気厳禁です。

充電前にバッテリー液量を確認し、液面がLOWER LEVEL近くまで低下している場合は補水してから充電します。

液不足で極版部分が露出している場合には、爆発の原因になることがあります。

充電完了後は30分程度放置し、ガスが抜けるのを待ちます。

通電中にクリップを外すなど、スパークの出る行為は厳禁です(爆発注意)。

バッテリーの放電が進み、希硫酸の濃度が下がると比重は下がります。

濃度が下がると水の割合が増え、比重が下がります。

バッテリーが硫酸を化学反応させて電子を取り出しているため、水の割合が増えます

放電の過程で硫酸が「水」(H2O)と「硫酸鉛」(2PbSO4)に化学変化します。

水はバッテリー液の中に存在し、「硫酸鉛」はマイナス電極に付着している為、バッテリー液内は硫酸が減った分、水が増える事になります。

従って、放電が進むと比重が下がることになります。


スポイト式比重計

簡単にバッテリー液の比重を測定するには、スポイト状の比重計を使用します。

カーショップや通販で、安いものであれば、1,000円程度で購入できます。

構造は単純で、スポイトの中に目盛りの入った棒状フロートが収まっています。

このフロート式と同じ原理で機能する、インジケータが付いているバッテリーがありますが、6槽あるセルのうち、1槽のみの状態を示しています。

千円以下で別売されている突出式のインジケータもありますが、色表示のみで、比重の数値は分かりません。

その代わり、バッテリー液が減った時の表示機能があります。



スポイト式比重計は、目盛りが上から1.100~1.300と刻まれています。

比重が高い液体を吸い込むと、棒フロートが浮き上がって、液面の境界線がその液体の比重値を示します。


扱いに慣れていない素人は酸への耐性のあるゴム手袋などをした方が良いです。

軍手などは逆効果で、希硫酸が浸透して手に付着する恐れがあります。


硫酸が目に入ると最悪のケースでは失明する可能性もありますので作業用ゴーグルを着用するよう比重計に注意書きがあります。

走行前に比重値を測っても正常な数値が測れない場合があります。

一般的には、「液温が20度」で計測するとされています

走行後、エンジンを切って5分ぐらい経過してから数値を測ることが推奨されます。

測定の手順は下記の通りです。

[1]. バッテリー本体上面のキャップを外しウエスなどの上に置きます。

[2]. 比重計のスポイト部分のゴムを指で押します。

[3]. 比重計の先端部をバッテリー上部から静かに本体内へ差し込みます。

[4]. スポイトの要領でバッテリー液をゆっくり吸い上げます。

液を吸い上げたときにフロート部分に気泡が付着している場合は、ノズルをアシストパイプに差し込んだ状態で軽く振って気泡を取ります。


※気泡が付着していると正確な測定ができません。

※アシストパイプの外部で振ると希硫酸が飛散して大変危険です。

[5]. 吸引したバッテリー液面と目線を水平にして横方向から確認し、浮きの目盛りを読み取ります。


[6]. バッテリー液が減っていたら、比重計の値が規定値から外れないよう注意しながら、アシストパイプをそのままジョウゴ代わりに蒸留水を足します。

[7]. 必ずキャップを元に戻し、すべてのキャップがきちんと締まっていることを確認し、閉め忘れにご注意します。

[8]. 使用後はスポイトゴムで水道水を数回吸い上げ、内部・外部とも洗浄し、よく乾かしてから付属のケースにいれて保存します。



正常なバッテリー液は無色透明です。

※比重計で吸引したバッテリー液が濁っている(黒色、茶色)場合は、電極板が劣化、損傷している可能性が考えられます。

バッテリー上部の「液栓」と呼ばれるキャップには、希硫酸が付着しているので、気を付けて取るようにします

万が一、手などに付いてしまった場合には、水道水で十分に洗い流すようにします。

液栓は、排気孔があり、突出式と溝式がありますが、溝式はコインなどを使用して外すことができます。

普通のネジと同じように反時計周りに回せば簡単に外れます。

外したキャップの液が床に付着しないよう、クロスなどの上に置きます。


使用したクロスは、後で廃棄するか、充分な水で付着液を洗い流します。

比重計はスポイトのようになっているので、先端を各セルの液内に入れてバッテリー液を吸い上げます。



液面が示している目盛りの位置が比重になります。

写真の場合には、1.210となっています。

満充電で良好な状態のバッテリー液の比重は1.280程度で、希硫酸の濃度は30~40%です。(気温にもよります)

放電率0%で1.280、100%だと1.120程度が目安と言われています。

気温が上がると同じ濃度でも比重は下がります。

バッテリー液の比重は、あくまでも硫酸濃度の測定値によるバッテリー液の状態の判断基準です。

比重以外に、電圧変化、CCA値等をみてバッテリーの劣化の程度を判断します。

比重計を見た時に、「赤・黄色・緑のどの部分に液体があるか」で充電状態をざっと判断できます。

1)緑:正常

2)黄色:注意

3)赤:充電不良

バッテリーの液の量が減っている場合(水分だけ飛んでいる状態)には、硫酸濃度が濃くなりますので比重は上がりますし、バッテリー液を補充するとそこから比重は下がります。

全てのセルの液量が標準値の状態で、比重計の目盛りが1.280を指していれば良好と言う事になります。

1.240以下だとバッテリーの劣化が進んでいるか、充電が必要な状態と言われています。

セルは6か所ありますが、1カ所でも、比重計の数値が赤色の危険ゾーンにある場合は、バッテリーが弱っている証拠です。

すべての比重を確認し、液栓を閉めます。

こぼれてしまったバッテリー液があったら拭き取ります

最終確認として、比重が正常値であって「バッテリ液ーの量が少ない」あるいは「バッテリー液の量にばらつきがある」場合には、バッテリー液を補充したり、多い個所から少ない個所へ液体を補充します。

バッテリー液の比重が低すぎる場合には、車を走らせるか、バッテリー充電器などを使用して充電した方が良いです。

充電しても電圧も比重も上がらない場合には電極へのサルフェーションが進行している可能性が高いです。


インジケーター付きバッテリー

パナソニックのcaosシリーズは天面にある「インジケーター」で液量を確認します。





(1)日常点検でインジケーターの表示が「要交換(補水必要)」になっていないか確認します。

(2)インジケーターの表示が「要交換(補水必要)」の場合は、使用を続けず、速やかに交換することが推奨されます。

補水する場合は以下作業手順で実施します。

※インジケーターの表示が要交換(補水必要)の状態のままで使用してしまった場合は、内部劣化により、爆発に至る可能性が高くなりますので、速やかにバッテリーを交換します。

※インジケーターの表示が黒くなっているなどで確認できない場合は、使用を続けず速やかにバッテリーを交換します。

※インジケーターは6セル中の代表1セルの液比重(充電状態)を表示しています。

※保証期間を超えたバッテリーは、定期的な補水メンテナンスを行うことを推奨します。

2. 補水する前の準備

固くしぼった濡れ雑巾などでふたを拭きます。

ふたを拭くことで静電気を取り除きます。


3. 液口栓を取り外すために、コントロールシートをはがします。


※減液抑制シートを剥がした場合、減液抑制効果が減少しますので、液量を適正に管理する必要があります。


※一度剥がしたラベルは、貼りなおさないようメーカーの注意書きがあります。

4. バッテリー液の補水

「カーバッテリー側面に液面線が表示されている場合」と同じ手順で補水します。



屈折式比重計


こちらの比重計は、光の屈折によりクーラント液(冷却水)の凍結限界温度、バッテリー液の比重、充電状態などを一度に検査が可能です。 

使用前に行う校正用のドライバーやスポイト、蒸留水、メンテナンス用クロスも付属し、届いてそのまま使用できます。 

さらに、クッション入りのしっかりした箱入りで、繊細な機器の保管も安心です。

測定後は水を含ませた布で清掃して保管します。

測定値は、色の変わる境界の数値を読み取ります。

下図ですと、比重1.19を示しています。