耳をいたわる普段の生活習慣


70歳を超え、耳鼻科を受診して、聴力が落ちていると言われて、将来補聴器の世話になるのかとがっくりきたのですが、定期的に耳鼻咽喉科を受診する以外に、これ以上耳を悪くしないための生活習慣とは何かを考え直してみることにしました。



耳の健康を維持するためには、良質な睡眠をとって疲労やストレスを溜めないようにします。

過剰に大きな音

耳の健康保護のためには、過剰または正常範囲を超えて音を聴くことを控えます。

大きな音にさらされることで起こる難聴を「騒音性難聴」あるいは「音響性難聴(音響外傷)」といいます。

騒音性難聴は主に、職場で工場の機械音や工事音などの騒音にさらされることで起こります。

一方、音響性難聴は、爆発音あるいはコンサート・ライブ会場などの大音響などにさらされるほか、ヘッドホンやイヤホンで大きな音を聞き続けることによって起こります。

後者は「ヘッドホン難聴」あるいは「イヤホン難聴」と呼ばれ、近年、特に問題視されています。

イヤフォンを大音量で長時間聴くことで引き起こされる「ヘッドホン難聴」は、耳を過剰に使用することで、音を伝える役割をしている有毛細胞が徐々に壊れることが原因です。

この症状はじわじわと進行し、両耳が少しずつ聞こえなくなっていきます。

症状の進行に気がつきにくいため、重症化のリスクが高く、悪化すると聴力の回復は困難になる病気です。

耳から入った音は、内耳の蝸牛(かぎゅう)という器官にある「有毛細胞」という細胞で振動から電気信号に変換され、脳に伝わることで聞こえるようになります。

しかし、自動車の騒音程度である85dB(デシベル)以上の音を聞く場合、音の大きさと聞いている時間に比例して、有毛細胞が傷つき、壊れてしまいます。

有毛細胞が壊れると、音を感じ取りにくくなり、難聴を引き起こします。

WHOでは、80dBで1週間当たり40時間以上、98dBで1週間当たり75分以上聞き続けると、難聴の危険があるとしています。

なお、100dB以上の大音響では急に難聴が生じることもあります。

特にヘッドホンやイヤホンは耳の中に直接音が入るため、周囲に音漏れするほどの大きな音で聞いていたり、長時間聞き続けたりすると、難聴が起こります。

注意しなければならない点は、極端に音のない生活に切り替えないようにすることです。

これは、耳の過小使用の状態であり、それも耳の健康を害することになります。

耳に効果的な栄養素

耳の健康を維持するためには、老化防止を抑え、ストレスを軽減できる食事を心かけていきます。

傷ついた末梢神経を修復し、
そのほか、血管を強くして血液サラサラ効果があり、老化を防止するのにも効果的なビタミンB12がおすすめです。

牡蠣やシジミ、あさり、サンマ、イワシ、牛・豚・鳥のレバーなどに多く含まれています。

また老化防止作用やアンチエイジング効果の高いセサミンを含むゴマも、耳なりにいいといわれています。

そして、ストレス軽減に効果的な栄養素は、パプリカやブロッコリー、キウイなどの食べ物に多く含まれるビタミンCです。

ビタミンCは一度に過剰に摂取するのではなく、こまめに取り入れます。

ビタミンやミネラルが多く含まれる黒ゴマ、ほうれん草、海草類もおすすめです。

カルシウムを多く含む鶏肉、えんどう豆、しらす干しなど、十分なカルシウムの補給は耳の複雑な骨の構造を維持するために必要です。

さらに、小麦、米、緑豆、ギーなどが耳の健康を維持するのに有益な食べ物であるといわれています。

ただし、血中コレステロールが高い人は、脂肪やギーなどの油を多量に摂取することは控えます。

血中コレステロールが耳内毛細血管の閉塞を起こす原因になります。

食事面から耳なりを改善するには、血流やリンパの流れをよくする食品を摂るのが有効です。

血液やリンパの流れがよくなれば、耳にも酸素や栄養が十分に行きわたるため、その症状を緩和する効果が期待できます。

血流をよくする食べ物として挙げられるのが黒豆です。

黒豆には、血管を広げる効果のあるリノール酸が多く含まれています。

また、血行をよくするミネラル類も豊富です。

リンパの流れをよくする食材としては、ニンジンや大根、玉ねぎ、カボチャ、山芋、ニラ、ハトムギなどが代表的です。

耳は腎機能と深く関連していると考えられているため、腎臓や副腎の機能を高める食事を摂ることも効果があります。腎機能を高める食材には、レンコン、ゴボウ、もやしなどがあります。

耳鳴り

人間の耳には、外界からのすべての音が届いていますが、脳は前頭皮質の機能によって、必要な音や価値のある音を積極的に選択し、それ以外の不要な音は無視しています。

脳は、5%ほどの頻度の音に対し積極的な注意を向け、80%もの頻度の音に対してはあまり注意を向けません。さらに5%未満のまれな頻度なときにはまったくといっていいほどに関心を示しません。

難聴が進行すると聴力の範囲が狭まり、音から得られる情報も少なくなり、脳は不足している情報を補うために音に対する情報処理の感度を高め、脳で処理する音の領域を拡張します。

その結果、本来は無視していた音にまで注意を向けてしまうことになります。

そうした認知のゆがみによる音の知覚が耳鳴りの本態なのです。

難聴は、一般的に加齢によって徐々に進行します。

日本人全体の10~15%に耳鳴りがあると言われます。

65歳で25%、75歳で50%、85歳で90〜100%の人が難聴になるといわれています。

また高齢化に伴って、日本の全人口における難聴の割合は2017年現在、25〜30%と徐々に増加しています。

難聴の増加とともに、耳鳴りの患者数も増加傾向にあります。

月に一度くらいの頻度で5~10秒間くらいの耳鳴りであれば、ほぼ心配はいりませんが、数時間続いたり、たびたび起こったりするようであれば、きちんとした検査を受けた方が良いです。

耳鳴りを完全に治すことは難しいといわれています。

しかし、症状を軽くすることはできます。

・ 安静を心がける

・ 騒音のある場所を避ける

・ 睡眠不足にならないように規則正しい生活を送る

・ ストレスをうまく解消する

鼻のすすり癖

鼻と耳は耳管で繋がっていて、鼻の呼吸の圧は耳管を通じて鼓膜などへの影響があります。

鼻からの急激な圧は耳への負担に繋がります。

鼻すすりは、耳と鼻をつなぐ耳管という管を経由して鼓膜に陰圧をかけることになり、鼓膜が中へ凹んでしまいます。

それを繰り返すと、中耳に水がたまる滲出性中耳炎、鼓膜が凹んだままになる癒着性中耳炎、凹んだ鼓膜に耳垢が蓄積されてできる真珠腫性中耳炎などを起こします。

真珠腫性中耳炎は、骨を溶かし難聴や眩暈などを起こす恐れがあります

鼻すすりは、耳管開放症を発症する原因にもなります。

耳管が開放してしまうことによって、呼吸音が耳に直接「ゴーゴー」と響き、自分の声がこもるようになる難聴性の症状が出ます。

耳管開放症の治療は、耳にカテーテルを通したり、鼓膜にパッチを貼ったり、点鼻薬で一時的に耳管を閉じさせるなどの対象療法がメインで、根本的な治療は難しいのが現状です。

また鼻をすすることで頭痛の原因ともなってしまいます。

細菌やウイルスを含んだ鼻水が副鼻腔に入って、膿が溜まってしまうと副鼻腔炎(蓄膿症)を引き起こす可能性もあります。

鼻を強くかまない

鼻水を出すために鼻をかむときはゆっくり優しくを意識します。

鼻や耳は思っているよりもデリケートな器官です。

鼻をかむときは、片方づつ、ゆっくり、優しくかむのが良いです。

鼻をかむときに意識しするのは次の4つです。

(1)ティッシュを鼻にあて、片方の鼻翼を押さえる。

(2)ゆっくりと鼻水を出す。

(3)次に反対の鼻翼を押さえ、同じように鼻水を出す。

(4)何度もこのような動作を左右交互に繰り返し、鼻水が残らないようする

年齢を問わず両鼻同時に強くかむ動作をする人が多いですが、それは危険です。

鼓膜に強い圧力がかかってしまうからです。

細菌やウイルスを介した鼻水が、耳管を通して中耳に送り込まれると耳痛や耳だれをおこす急性中耳炎になります。

また、まれに外リンパ廔(ろう)という病気を起こすことがあります。

内耳のリンパ管の膜が圧力によって破れて、高度の難聴や激しい眩暈(めまい)を起こす病気です。

この原因の1つは強く鼻をかむことです。

繰り返し鼻水が垂れてくる鼻炎の時は、鼻専用マスクもあります。

鼻の中に直接入れるのですが、全く目立たないのに鼻水吸収効果は大きいです。

マスクは外部からの細菌やウィルスを防ぐ目的ですが、鼻水に悩まされている人は鼻マスクがおすすめです。

外気温(寒さ)

耳の毛細血管はとても細く、急激な寒さでや冷えで血行が悪くなります。

耳がピリピリ・チクチクしたり、ひどい時はちぎれるような痛みを感じます。

耳の奥がキーンとすることもあります。

冷たいものを食べると頭がキーンとする「アイスクリーム頭痛」と同じです。

温めたりマッサージをするなどして血行を良くします。

マフラーやイヤーマフ、帽子などで外気にさらさないようにするだけでも効果があります。

気圧変化

通常耳の中は、外の気圧と同じになるように保たれています。

急激な気圧の変化によって体の外と内側に気圧差が生じると、鼓膜が押されて痛みを感じます。

飛行機の着陸時や山に登った時、エレベーターに乗った時など気圧が変化したときに耳が詰まったような感じになります。

耳抜きはツバを飲み込む、鼻をかむようにするなどの方法があります。

痛くなる前からこまめに行います。

飴などを口に入れておくことも有効です。

睡眠不足

自律神経の乱れを引き起こす睡眠不足も、耳鳴りが起こる原因になります。

普段から規則正しい生活を送るようにします。

リラックスできる入浴や適度な運動は、睡眠の質を高める手段として効果的です。

耳掃除

耳掃除の目安は、2~3週間に1回程度にします。

耳垢には皮膚の保護や、虫の侵入を防ぐ役割もあるため、こまめに掃除し過ぎないことも大切です。

耳掻きや綿棒を使います。

耳掃除用でない物(爪楊枝やマッチ棒など)を使うと外耳道を傷つけてしまいます。

使用後の耳掻きは、アルコールを含むウェットティッシュで拭く等して、常に清潔に保管します。

ペン立てに挿しておく等すると、雑菌が繁殖して不衛生になります。

ウォーキング

耳鼻科の名医として知られる山岨達也医師(東大病院耳鼻咽喉科教授)も、難聴を悪化させる要因として動脈硬化や生活習慣病を挙げています。

聴力を守るためにも動脈硬化の予防が大事です。

東京都健康長寿医療センター研究所の青柳幸利博士(運動科学研究室長)らによる「中之条スタディ」によると、「1日8000歩、うち20分速歩きでウォーキングをすると生活習慣病が防げる」ということですが、動脈硬化予防の目安は7000歩とされています。

水分補給

耳鼻科では、耳鳴りの患者さんに利尿剤を処方することがあります。

内耳に水がたまったり、水分代謝が悪くなったりしている場合に、その「水はけ」をよくするためです。

長沼教授らが2000年に始めた水分摂取療法は、毎日、男性なら2~2.5リットル、女性なら1.5~2リットルの水を飲む方法です。

メニエール病の患者さん122人を対象にした初期の調査では、95%の人がまったくめまいを起こさなくなったということです。

また、この治療法は聴力の改善にもつながり、35%の人の聴力が改善し、65%の人が聴力を維持、聴力が低下してしまった人は5%にとどまったと、長沼教授は報告されています。

内耳の水分代謝は、脱水状態のときにも悪くなりがちです。

そのために耳鳴りが起こっている場合は、水分摂取療法が有効だと思われます。

一度に大量の水を飲むのではなく、こまめに飲むことがポイントです。