封書の締めの方法


封字(ふうじ)は古代中国で木簡に泥粘土をあてて印を押した封泥(ふうでい)に由来します。

日本では封字になりましたが、欧米ではシーリングワックスという蝋を溶かして、シーリングスタンプを押す方法になりました。


封字を書く理由

封字は、先方に対して「確かに封をしました」ということを示すために書きます。

途中で開封されていない=第三者に読まれていないことの証明にもなります。


封字の「〆」

封書の閉じ部の「〆」を「×(バツ)」と書くのは、間違いです。
封筒を閉じることを「封緘(ふうかん)」と言い、この封緘に使用する文字「〆」という字は、封字(ふうじ)と言われます。

「〆」は「締」の略字で、「封筒を締めました」という意味です。

じつはこの〆という字は、和製漢字です。

そのため、「締める」のように「〆る」という風に、おくりがなを付けた書き方もできます。


また、「〆」を急いで雑に書くと、その気はなくても「×」に見えてしまうことがあります。

ポイントは一画目の斜線の下をはっきり<はねる>こと。カタカナの「メ」のように<はらう>と「×」に見えるので注意します。


〆という字は、二画で書ける画数の少ない漢字で、一筆書くことになります。

まず、上から左下へと緩やかに書き下ろし、左上からやや右上に立ち上がり、右下へと止めます。


この時、筆を途中で上げたりすると、バツマークに見えやすくなってしまいますので、できるだけ線を続けて書くようにします。

また、封字である〆という字は、形が崩れると、ひらがなの「の」や「α(アルファ)」という字にもとらえられやすくなりますので、書く際は丸みをできるだけ抑え、メリハリのある文字になるよう、気を付けて書きます。

また封字を書く時には、糊付けして、しっかり乾かしてから〆の字を書くように気をつけます。

さらに、できるだけ裏移りのしないボールペンやサインペン、筆ペンを使って書くのがおすすめです。

大切な書類に字が写ってしまっては台無しですので、ペンについても気を付けて選びます。


封字や封緘印の色

封字や封緘印の色は黒色か青色が無難です。

朱や赤ですと、速達などと紛らわしくなります。

「〆」や「緘」といった封字を手書きする場合、黒色のボールペンや筆ペンなどを使うのがマナーです。

会社などで「緘」のハンコを使う場合朱色のインクを使うこともありますが、原則的には封字や封緘印は黒色か青色た良いです。


横書きの洋封筒に封字は不要

横書きの洋封筒であれば、一般的に欧文手紙に準じて「〆」などの封字は不要ですので、省略して構いません。

但し外国人宛てではなく、日本人宛ての封書であれば、書いても失礼ではありません。

また、封緘シールやスタンプを用いてもかまいません。

この封字という習慣はあくまで日本人宛の封筒に用いるものであって、宛先が漢字を知らない海外の人であれば意味をなさないので注意します。

外国人宛てで封書に封緘をする場合は、シーリングスタンプが一般的で、シーリングワックスや封緘シールも使用します。

特に封字の「〆」については、「×(バツ)」や「キス」マークと受け取られてしまう可能性もありますので、避ける方が無難です。

イベントや式典の案内状などでは、デザインに応じて封緘シールや封蝋(シーリングワックス)が使われることもあります。


封筒の閉じ方

封緘の基本マナーは「のりで丁寧に閉じること」です。

のりの代表的な種類といえば、液状の液体のり(液状のり)と固形のスティックのり。

「封緘 のり」はどちらも使えます。

ただし、それぞれの特徴によって最適な封筒が異なります。

液体のりは粘着性が高い一方で、塗布部分がフニャフニャと波打ちしやすいというデメリットがあります。

そのため、上質紙などの強度が低い紙の封筒や、デザイン性の高い封筒は避けたほうがベターです。

茶封筒など強度の高いクラフト紙を使った封筒に適しています。

最近はシワになりづらいタイプも販売されています。

操作性の高いスティックのりは粘着力の弱さがデメリット。

使用する際は、粘着力の高い強力接着タイプを使い、送付前に接着面をきちんと確認することが大切です。


セロテープやホチキス

ビジネスでは、レベルの高い書類にセロテープやホチキスだけで封をすることはマナー違反とされています。

とくに目上の人宛ての手紙や重要書類、儀礼文書では厳禁です。

テープは、はがしやすく、また一旦はがしても簡単に封をしなおせます。

ホチキスも、針を起こして外せば、簡単に開封し、針を元通りに戻せます。

つまり第三者に読まれても、元に戻されると分かりません。

多少面倒ではありますが、封筒は基本的に糊で閉じるのがマナーです。

封入物が多くて封筒がパンパンになってしまう場合にセロテープで閉じることがありますが、その場合ものり付けは必須です。

ちなみに、同じテープ類でも外から見えない両面テープならOKです。

セロテープ使用は、一般の会社では、書類の重要度により、次のように使い分けている場合もあります。

一般書類:糊付けorセロテープ、クラフトテープ、いずれでも可 

人事・労務関係書類:糊付け+封緘印 

会計関係書類:糊付け+封緘印、糊の剝れ防止のため、上から更にセロテープを貼る

効率と安全性を重視する一般ビジネス社会では、書類のレベルや会社の方針により様々です。


封字の種類

「〆」「締」: もっともポピュラーな封字です。「〆」は「締」の略字です。「締」は〆という字の別字ですので、こちらも〆と同様の意味で使われる封字です。ただし、画数が〆という字に比べると多いため、あまり好まれて使われる機会が少ないということもあります。

「封」 封じるという意味で「〆」「締」よりもあらたまった印象を与えます。


「緘(かん)」: 「とじる」という意味で、重々しい印象があり、とくに重要な書類で使われています。

「寿」: おめでたい意を込めて、結婚などの慶事では「締める」「封じる」は相応しくないため、「寿」を使用します。

「賀」:おめでたい意を込めて、祝いごとや祭りごとなどの慶事に使います。

「蕾」「莟」「つぼみ」……つぼむという意味で、女性のみが使えます。平仮名の「つぼみ」は縦書きで用います。あくまでも私的な手紙で使うものです。蕾というのはまだ開いていない花のことを指します。蕾は開くことで立派な花になりますが、そういう意味で「まだ開いていません」ということを示す印になる、ちょっとおしゃれな封字です。

ややこしいのは「〆」と「封」「緘」の使い分けですが、事務的な文書であれば「〆」で問題ありません。

「封」は明らかに目上の方に宛てた手紙で使うとよいです。

「緘」は手書きで書かれることは滅多になく、印鑑(封緘印)を使うのが普通です。

慶事の手紙には「寿」や「賀」を使うと慶びの意が添えられます。

なお、ご祝儀やお香典の内袋は、基本的に封を糊付けしないため、封字を用いる必要もありません。

また、ご祝儀には使わない理由は、封緘を割ることで、別れることを連想させることから、縁起が悪いとされています。

親しい人に送る手紙では、封字でも「花」「道」「海」など自由な発想で使うことができます。

自作の個性的なスタンプを使うこともできます。


儀礼文書の封字


「寿」は結婚のお祝いの手紙に使うものというイメージがありますが、取引先の事務所移転や新店舗オープンを祝って送る祝賀状、昇進祝いにも使います。

手書きする場合は、他の文字にかからないように気をつけます。

扇子型や金色で書かれた封緘シールもよく使われています。

法事の案内や、通夜や葬儀に出席できない場合に送るお悔み状の封字には「封」を使うのがならわしです。

弔事の手紙には他にも、上のイラストのように「左閉じ」にする、不幸が重なることを避けるという意味で二重封筒を使わない、封緘の日付は書かないなどのルールがあるので注意が必要です。


封鑑(封緘印)封蝋(シーリングワックス)封緘シール


印鑑(封緘印)

手書きよりも厳重な印象をあたえます。

「緘」がポピュラーですが、「封」などの種類もあります。


会社などでは使用しているところが多く、日常的に使われています。

たくさんの取引先などに文書を送る際には、この「封緘印」を使って「封緘」の印とするのが一般的な使い方です。



また個人的に使われる「封緘印」もあります。


封緘シール

おもに祝賀状でお祝いの気持ちを演出するためや、案内状や招待状など、デザインにこだわった手紙で使われています。


文字タイプから、ロゴなどデザイン性の高いものまで多くの種類があります。

封緘シールはビジネスの場では基本使いません。

「封緘」に使う封緘シールというものがたくさん市販されていますが、封緘シールは私的な手紙などに使うものです。


封蝋(シーリングワックス/シーリングスタンプ)

古くからヨーロッパで封締めとして使われてきたのが、蝋(ろう)をもちいた封蝋です。

「封蝋」というのは封筒の「封緘」したい部分に、火をつけて溶かした蝋を落としてそこにハンコを押すというやり方です。

海外の歴史ものの映画などでも時折見られる「封緘」の印で、招待状などの「封緘」に使うことでちょっと洒落た感じになります

封緘シールと同じく、事務的な文書のやりとりで使用されることはありませんが、デザインや形状の凝った手紙に使うとおしゃれでクラシックな印象を与えることができます。