イプシロンロケット
イプシロンロケット(Εロケット、英訳: Epsilon Launch Vehicle)は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)とIHIエアロスペースが開発した小型人工衛星打ち上げ用固体燃料ロケットで使い捨て型のローンチ・ヴィークルです。
日本の衛星打ち上げの自律性をになうロケットとして基幹ロケットに位置づけられます。
概要
イプシロンロケットは、2006年(平成18年)度に廃止されたM-Vロケットの後継機として2010年(平成22年)から本格的に開発が始まり、2013年(平成25年)に試験1号機が打ち上げられた固体ロケットです。
M-VロケットとH-IIAロケットの構成要素を流用しながら、全体設計に新しい技術と革新的な打ち上げシステムを採用することで、簡素で安価で即応性が高く費用対効果に優れたロケットを実現することを目的に開発されています。
開発が開始された2010年(平成22年)時点では、2段階開発によりM-Vロケットの約3分の2の打ち上げ能力と約3分の1の打ち上げ費用(30億円以下)を実現することが目標とされました。
開発第1段階の機体での定常運用で38億円、2017年(平成29年)度頃の開発第2段階の低廉化機体で30億円以下での打ち上げを目指すとされましたが、コスト削減は進まず5号機も58億円と非常に高価となりました。
初代プロジェクトマネージャ(PM)はM-VロケットのPMを務めた森田泰弘でした。
2013年(平成25年)に打ち上げられた試験機の太陽同期軌道打ち上げ能力は450kg、2016年(平成28年)度に打ち上げられた強化型イプシロンロケットとなる2号機からは同打ち上げ能力が3割向上され590kg以上となりました。
そしてH3ロケットと技術を共有するイプシロンSを完成させて実機価格30億円以下での打ち上げの実現を目指す計画となっています。
試験機の標準型の機体は3段から構成されます。
第1段にはH-IIAロケット等に使用されているSRB-Aを改良したものを、第2段と3段にはM-Vロケットの第3段とキックステージを改良したものを流用します。
強化型では第2段を新規開発し、第3段を中心に試験機の改良型を使用します。
イプシロン (Ε) の名前は、ラムダ (Λ) ロケット・ミュー (Μ) ロケットなど日本で開発されてきた固体ロケット技術を受け継ぐ意味を込めギリシア文字が用いられました。
公式には「Evolution & Excellence(技術の革新・発展)」「Exploration(宇宙の開拓)」「Education(技術者の育成)」に由来します。
また試験1号機の打ち上げ後の記者会見で、「ε(イプシロン)」が数学で小さい数字を表し、イプシロンロケットが、ミュー(M)ロケットを受け継ぎながら、全く別次元に変身したロケットなため「m(ミュー)」を横倒しにした「ε(イプシロン)」と命名されたことが明らかにされています。
イプシロンSの「S」には、Synergy(シナジー)、Speed(即応性)、Smart(高性能)、Superior(競争力)、Service(打上げ輸送サービス)の意味が込められています。
固体ロケット(比較参考)
型式 | M-3SII | M-V | J-I 1号機 | J-I 2号機 | イプシロン |
---|---|---|---|---|---|
全高 | 27.8 m | 30.8 m | 33.1 m | 26.2 m | 26.0 m |
直径 | 1.41 m | 2.5 m | 1.8 m | 2.5 m | 2.6 m |
重量 | 61.0 t | 140.4 t | 88.5 t | 91.5 t | 95.1 t |
誘導方式 | 電波誘導 | 慣性誘導 | 電波誘導 | 電波誘導 | 慣性誘導 |
低軌道への軌道投入能力 | 770kg | 1,850kg | 870kg | 1,200 kg | |
ペイロード比 | 1.26 % | 1.32 % | 0.98 % | 1.33 % | |
打ち上げ費用 | 36億円 | 75億円 | 43億円 | 53億円 | |
kg毎の打ち上げ費用 | 468万円/kg | 405万円/kg | 489万円/kg | - | 442万円/kg |
開発経緯
M-Vロケットは、宇宙科学研究所(ISAS、現・JAXA宇宙科学研究所)により固体ロケットの研究と科学衛星打ち上げ用として開発されましたが、搭載衛星にロケットを最適化できるという利点はあるものの、打ち上げには約80億円の高額な費用と約3年の製造期間が必要で、本来は簡素で安価で即応性が高い固体ロケットの利点を生かしきれていませんでした。
M-Vロケットは衛星毎にカスタマイズされているため統一的な仕様が存在しません。代表例として5号機の仕様を記します。
全長: 30.8 m
直径: 2.5 m
重量: 140.4 t
低軌道への打ち上げ能力(ペイロード): 1,850 kg
段数(Stage) | 第1段 | 第2段 | 第3段 | キックステージ | |
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諸元 | 全長 | 30.8m | 17.2m | 8.6m | 4.6m |
代表径 | 2.5m | 2.5m | 2.2m | 1.4m | |
各段点火時質量 | 85t | 39t | 16t | 3.3t | |
固体 ロケット モータ | モータ名称 | M-14 | M-25 | M-34b | KM-V2 |
全長 | 13.73m | 6.61m | 3.61m/4.29m (収納時/伸展時) | 1.87m/2.30m (収納時/伸展時) | |
代表径 | 2.5m | 2.5m | 2.2m | 1.4m | |
ケース材料 | HT-230M HT-150 | CFRP (FW) | CFRP (FW) | CFRP (FW) | |
推進薬 | BP-204J | BP-208J | BP-205J | BP-205J | |
モータ質量 | 83t | 37t | 12t | 2.7t | |
推進薬重量 | 72t | 33t | 11t | 2.5t | |
真空比推力 | 274sec | 292sec | 301sec | 301.7sec | |
平均真空推力 | 3760kN | 1520kN | 337kN | 82.8kN | |
有効燃焼時間 | 51sec | 62sec | 94sec | 89.8sec | |
- | 誘導方式 | ストラップダウン方式光ファイバージャイロ/電波誘導方式 | |||
制御システム | ピッチ・ヨー | 可動ノズル | 可動ノズル | 可動ノズル | |
ロール | 小型固体ロケットモータ | 小型固体ロケットモータ | サイドジェット |
全備重量139トンというM-Vロケットの大きさは、同じ三段式固体燃料ロケットを採用したアメリカ空軍のICBMであるLGM-118ピースキーパー(88.5トン)や同型モーターを採用したロッキード・マーティン社のアテナ II ロケット(120.7トン)、ロシアのSLBMであるR-39(90トン)をしのぎ、世界最大級の固体燃料ロケットとなっていました。
ただしブースターも含めればスペースシャトル固体燃料補助ロケットと、その派生型のアレスIの一段目が世界最大の固体燃料ロケットです。
しかし、M-Vは大量に作られるこれらのミサイルや多くの商業ロケットとは異なり、1機1機が衛星・探査機に合わせて組み立てられた特注品であり、積荷にあわせた仕様に調整することができるが、その分高価であることが弱点でした。
また、そのランチャーは斜め打ち上げのため、発射時の噴進反射波がロケット側に直接跳ね返る構造であるため、発射時に大きな震動が加わり、衛星に損傷を与えかねない危険もはらんでいました。
2006年7月26日にはM-Vロケットの廃止が正式に発表されました。
J-Iは今後需要が増すと考えられた軽量衛星打ち上げに参入するために計画されました。第1段にH-IIロケットの固体ロケットブースター(SRB)、第2段にM-23、第3段にM-3Bといった宇宙科学研究所開発のM-3SIIロケット(M-3SII)を使用するなど、既存のロケットを組み合わせることで研究開発費を抑えるのが当初の意図でした各段の誘導制御装置には大幅な改造を施さねばならず、結果的に高額なロケットとなってしまいました。(LEOに770kgを投入可能で36億円のM-3SIIに対し、J-IはLEO880kgで43億円でした)。
1号機
全段 | |||||
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全長 | 33.1 m | ||||
外径 | 1.8 m | ||||
全備重量 | 88.5 t | ||||
誘導方式 | 電波誘導方式 | ||||
各段 | |||||
段数(Stage) | 第1段 | 第2段 | フェアリング | ||
名称 | SRB | M-23 | - | ||
全長 | 21.0 m | 6.7 m | 6.9 m | ||
外径 | 1.8 m | 1.4 m | 1.65 m | ||
重量 | 70.8 t | 17.2 t | 0.6 t | ||
推進薬重量 | 59.1 t | 10.3 t | N/A | ||
平均推力 | 159.0 tf | 53.5 tf | |||
燃焼時間 | 94 s | 73 s | |||
真空中比推力 | 273 s | 282 s | |||
姿勢 制御 方式 | ピッチ ヨー | 推力飛行中 | MNTVC | LITVC | |
慣性飛行中 | EVE | SJ | |||
ロール | EVE | SJ |
J-Iは、1996年2月21日に試験1号機の打ち上げに成功しました。
この1号機の積荷は日本版スペースシャトルであるHOPE計画の高速再突入実験機「HYFLEX」で、大気圏再突入時のデータを無線で送信することに成功しましたが、機体は着水後に回収する計画であったところ、小笠原諸島沖に水没し、回収は断念されました。
2号機(中止)
全段 | ||||||
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全長 | 26.2 m | |||||
外径 | 2.5 m | |||||
全備重量 | 91.5 t | |||||
打ち上げ能力 | 870 kg (250km LEO) | |||||
誘導方式 | 電波誘導方式 | |||||
各段 | ||||||
段数(Stage) | 第1段 | 第2段 | 第3段 | フェアリング | ||
名称 | SRB-A | M-23 | M-3B | - | ||
全長 | 13.3 m | 6.7 m | 2.7 m | 6.9 m | ||
外径 | 2.5 m | 1.4 m | 1.5 m | 1.65 m | ||
重量 | 74.2 t | 13.1 t | 3.6 t | 0.6 t | ||
推進薬重量 | 65.0 t | 10.3 t | 3.3 t | N/A | ||
平均推力 | 182 tf | 53.5 tf | 13.5 tf | |||
燃焼時間 | 94 s | 73 s | 87 s | |||
真空中比推力 | 280 s | 282 s | 294 s | |||
姿勢 制御 方式 | ピッチ ヨー | 推力飛行中 | MNTVC | LITVC | スピン 安定 | |
慣性飛行中 | - | IRIS | ||||
ロール | IRIS |
J-I2号機の打ち上げは、2001年(平成13年)の宇宙開発委員会による宇宙開発計画見直しによって中止され、J-Iロケット計画は凍結されました。
2007年(平成19年)8月の宇宙開発委員会において次期固体ロケット開発計画の「開発研究」フェーズへの移行が認められ、開発は新たな局面に入りました。
認められた開発計画では当初の2段式の計画から3段式に変更され、M-Vロケットの既存モーターを基に新規開発した第2段と第3段を全体設計に最適化、新技術と革新的な打ち上げシステムを採用して運用性を向上させることで、費用対効果の高いロケットを実現させる計画でした。
2010年(平成22年)に次期固体ロケットの名称が「イプシロンロケット」に決定しmした。
2011年1月12日、最終的にJAXAがイプシロンロケットの射場を内之浦宇宙空間観測所とするとして事業を促進させていくと発表し、ミューランチャーを改修しました。
システム・構成
イプシロンロケットでは、H-IIAロケットなど従来のロケットで行われている搭載電子機器を一対一で接続する方法ではなく、LANのようなシリアルバス接続とすることで簡素化する手法をさらに進化させて、新たに開発した搭載点検系の機器と簡素な地上設備をネットワークで結んで自律点検機能を持たせることになりました。
これにより、数人とパソコン数台でロケットの打ち上げ前点検や管制を行うことが可能になり、これを「モバイル管制」と称しています。
この打ち上げ前点検作業は、点検項目が約2,000に及び、コンピュータ制御に切り替わる70秒前からでも約300項目あり、数十人がかりで数時間かかるものが、この新システムでは70秒で終えることができるようになりました。
一方、少数のパソコンでの集中管理の危険性として、管制用パソコン、たった1台の誤作動やウイルス感染、システムへの不正侵入や破壊によるプログラムの改竄が致命傷につながる恐れがあります。
冗長性を得るために2台のパソコンで管制を行いますが、従来の数十台パソコンで管制されるシステムに比べた危険性も指摘されています。
主要諸元一覧 | |||||
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全長 | 24.4 m | ||||
代表径 | 2.6 m | ||||
全備質量 | 91.0 t | ||||
ペイロード | 1,200 kg / LEO (250km x 500km)基本形態 700kg / LEO (500km 円軌道)オプション形態 450kg / SSO (500km 円軌道)オプション形態 | ||||
段数(Stage) | 第1段 | 第2段 | 第3段 | オプション | フェアリング (投棄分) |
使用モータ | SRB-A3 | M-34c | KM-V2b | 小型液体ステージ (PBS) | - |
各段質量 | 75.0 t (フェアリング非投棄分含む) | 12.3 t | 2.9 t (基本) 3.3 t (オプション) | (0.3 t) (3段に含む) | 0.8 t (投棄分) |
推進薬質量 | 66.3 t | 10.8 t | 2.5 t | 0.1 t | - |
真空中推力 | 2,271 kN | 371.5 kN | 99.8 kN | - | - |
比推力 | 284 s (真空中) | 300 s (真空中) | 301 s (真空中) | 215.0 s (連続) | - |
全燃焼秒時 | 116 s | 105 s | 90 s | - | - |
マスレシオ | 0.911 | 0.927 | 0.92 | - | - |
イプシロンロケットでは性能を落としてでも大胆に費用を削減する手法が採られ、第1段にH-IIAロケットの固体ロケットブースターのSRB-A3を最低限の改造(ロール制御用のSMSJなど)で流用し、M-Vロケットの1段と2段を統合しています。
2001年時点でSRB-Aは、SRBとしてはスペースシャトルのSRB、アリアン5用のP238に次いで世界で3番目に大きいSRBでした。ただし、SRBでは無いメインのロケットモータには、M-VロケットのM-14モータ、ヴェガロケットのP80モータ、インドのPSLVのS-138モータ等、SRB-Aより大きい固体ロケットモータ (SRM) は幾つか存在します。
費用を重視した設計がなされた第1段に対し、第2段及び第3段はM-Vロケット以上の性能向上が図られています。
第2段にはM-Vロケットの第3段M-34bモーターの改良型のM-34cを、第3段にはM-Vロケット5号機のキックステージKM-V2の改良型のKM-V2bを採用し、これらはモーターケースの軽量化や推進薬充填効率の向上が図られています。
これにより第2段と第3段のマスレシオ(各段モーター全体重量に対する推進薬重量の比)は世界最高水準であったM-Vロケット以上になり、ペイロード比(ロケット全体重量に対するペイロード重量の比)もM-Vロケットと同等の水準を維持できるようになっています。
第2段と第3段のモーターケースの材質のCFRPには東レの炭素繊維のT1000Gが採用され、製造工程は従来のオートクレーブ成形からオーブンキュア成形に変更され、高性能化と低廉化が同時に図られています。垂直打ち上げ
M-VまでのISAS衛星打ち上げロケットは、次にあげる必要性と利点によりランチャーから海に向かって斜めに打ち上げられていました。
・最小限の誘導機能で重力ターン方式による衛星軌道投入を行うため(主にM-3SIIまで)
・第一段ロケットが異常燃焼をおこしてもロケットを確実に海に投げ出すため
しかし、M-V以降の大型固体ロケットをランチャーから斜めに打ち上げるには、次にあげる欠点がありました。
・煙道を設置できず、打ち上げの瞬間、噴射の反射波が及ぼす衝撃が衛星にとって大きな障害となる。
・ランチャー離脱時に、それまでのランチャーの垂れ下がり(数十cmに及ぶ)から開放される振動がロケットにとって大きな障害になる。
・ランチャー滑走時の摩擦による抵抗が無視できない。
イプシロンロケットは垂直打ち上げに対応できる誘導制御機能が充分にあり(M-Vも同様)、第1段には信頼性の確立に必要な使用実績が充分にあるSRB-Aを使用する為、異常燃焼についての懸念が無くなり、斜め打ち上げでは欠点しか存在しなくなりました。
このため、従来のミューランチャーを改修してロケットは垂直に打ち上げられ、発射台下部には効果的な煙道が設置されました。
なお、M整備塔なども改修し、既存設備を最大限活用する形で発射装置が整備されます。
強化型イプシロン
強化型ではERGとASNARO-2の両衛星の打ち上げに対応させるために、太陽同期軌道打ち上げ能力が試験機の450kgから約30%増の590kg以上に強化され、フェアリングの衛星包絡域も15%拡大されています。
これを同時に達成するために、第2段モーターにM-35が新規開発されています。
M-35ではM-34cと比べて、モーター径を2.2mから2.5mに拡大させ、推進薬を約11トンから15トンに増量させ、推進薬の一つのアルミニウム粉末をSRB-Aと共通化し、推進薬燃焼速度の調整方式と推進薬充填形状を変更することで低廉化を図っています。
また、モーターケースの更なる軽量化も図られています。
モーターケースはCFRP製で、従来までは設計係数(安全係数)が1.5に設定されていたが、技術の進歩によりCFRPの品質の誤差が十分に解消されているとして、M-35のモーターケースでは設計係数を金属製と同様の1.25に落としています。
これにより、仮にモーターケースが同様の大きさの場合20%軽量化できることになりました。
主要諸元一覧 | |||||
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全長 | 26.0 m | ||||
代表径 | 2.6 m | ||||
全備質量 | 基本形態:95.4 t オプション形態:95.7 t | ||||
ペイロード | 1,500kg / LEO (250km x 500km)基本形態[5] 365kg / 長楕円 (200km x 30,700km、夏季)基本形態 365kg / 長楕円 (200km x 33,100km、冬季)基本形態 590kg / SSO (500km 円軌道)オプション形態 | ||||
段数(Stage) | 第1段 | 第2段 | 第3段 | オプション | フェアリング (投棄分) |
使用モーター | SRB-A3 | M-35 | KM-V2c | 小型液体ステージ (PBS) | - |
各段質量 | 74.5 t | 17.2 t | 2.9 t (基本) 3.2 t (オプション) | TBA | 0.8 t |
推進薬質量 | 66.0 t | 15.0 t | 2.5 t | TBA | - |
真空中推力 | 2350 kN | 445 kN | 99.6 kN | - | - |
比推力 | 284 s (真空中) | 295 s (真空中) | 299 s (真空中) | TBA s (連続) | - |
全燃焼秒時 | 108 s | 129 s | 88 s | - | - |
マスレシオ | TBA | TBA | TBA | - | - |
イプシロンS
SSO軌道 600kg以上、LEO軌道 1,400kg以上、複数衛星の打ち上げに対応し、軌道投入精度は高度誤差±15km以下、軌道傾斜角誤差を±0.15度以下まで向上することを目標としています。
第1段モータにはH3ロケットのSRB-3が採用されます(ただしSRB-3はノズル固定式、イプシロンSの第1段はノズル可動式)。
開発の効率化のため、2020年2月に行われたSRB-3の第3回地上燃焼試験ではイプシロンSで使われるTVCの機能試験も行われました。
打ち上げ実績
試験機:2013年9月14日、惑星分光観測衛星(惑星宇宙望遠「ひさき」(SPRINT-A)
2号機:2016年12月20日、強化型基本形態の初飛行。ジオスペース探査衛星「あらせ」(ERG)
3号機:2018年1月18日、強化型オプション形態の初飛行。高性能小型レーダ衛星(ASNARO-2)
4号機:2019年1月18日、複数衛星搭載、革新的衛星技術実証1号機(RAPIS-1)、超小型衛星3基(MicroDragon)(RISESAT)(ALE-1)、キューブサット3基(OrigamiSat-1)(Aoba VELOX-IV)(NEXUS)
5号機:2021年11月9日、複数衛星搭載、超小型衛星4基(HIBARI)(Z-Sat)(DRUMS)(TeikyoSat-4)
情報漏洩
2012年11月21日、社内ネットワークに接続された筑波宇宙センターの職員業務用パソコン1台でコンピューターウイルスを検知、28日にこのパソコンが「イプシロンロケットの仕様や運用に関わる情報」および「イプシロンロケット開発に関連するM-Vロケット、H-IIAロケットおよびH-IIBロケットの仕様や運用に関わる情報」などの情報を収集し、外部に送信していた可能性があることが判明し、この事実を同月30日に発表しました。
同30日は三菱重工も宇宙事業関連情報が新型ウイルスにより外部に流出していた可能性があることを発表しました。
その後、2013年4月18日JAXAが情報を管理しているコンピューターを定期点検した際、外部から侵入があったことを示す通信記録を発見。調査の結果、17日午後11時すぎ、国内と中国から接続され、きぼうの作業手順書など18件と、JAXAや米航空宇宙局(NASA)の職員ら延べ約190人のメールアドレスが載ったリストが流出した恐れがあることが判明しました。