米国のSLSスペース・ローンチ・システム


スペース・ローンチ・システム(Space Launch System, SLS)とは、NASAにより開発中の、アメリカ合衆国のスペースシャトルから派生した大型打ち上げロケットです。

これは取り消されたコンステレーション計画に続くもので、また退役したスペースシャトルを代替するものです


開発

SLSは、小惑星やラグランジュ点、また月と火星のように、地球近傍が対象となる目的地へ宇宙飛行士と装置を輸送するものです。


またSLS計画は、多目的有人機を配備するNASAのオリオン計画と統合されました。



SLSは、打ち上げの施設および地上での操作に際して、フロリダに設けられたNASAのケネディ宇宙センターを使用するものとされています。

月軌道プラットフォームゲートウェイ建設に利用されます

2010年NASA認可法案では、アレスIとアレスV型の機体設計を、有人用と貨物用とに使用できる単一の打ち上げ機へ変容させることを想定していました。

これは段階を経て、より強力なものへとアップグレードされることになっています。

この時点での計画は以下の通りでした。

上段部分を除去した第1段部分の当初の能力は、70t(ブロック0形態。SSME派生型第1段エンジン3機および部分的に燃料を充填された第1段部分)から100t(ブロックI形態。エンジン4機および完全に燃料を充填された第1段部分)を地球の低軌道(LEO)に送り込み、低軌道より彼方への任務に備えるものとなります。

地球離脱ステージを上段に搭載し、5基にエンジンを増加した場合の打ち上げ能力の総量は130tに達しており、これは今までに作られた中でも最も強力なロケットになります。

2011年9月14日、NASAは新規打ち上げシステム用に選ばれた設計案を公表し、これは当局の宇宙飛行士を、従来に増して宇宙の遠い場所へ運ぶことができ、また将来におけるアメリカ人の宇宙探査活動のための基礎を提供すると明言しました


打ち上げ機には4つの型式が公表されています。

ブロック0、I、IB、そしてIIです。

各形態には異なる第1段、ブースター、そして第2段が利用されます。

少数の機器にはスペースシャトルで開発された装置が直接受け継がれており、また他のものはSLS用として特別に開発されました





ブロックⅠは、スペース・シャトルで使われていた「RS-25」4基とSRB2基を装備し、直径は8.4mです。


後期の型式では5機のRS-25Eエンジンと強化されたブースターを採用し、また直径8.4mの第2段ステージには3機のJ-2Xエンジンが用いられます。 

5m級のフェアリングは10mもしくはそれ以上の長さを持ち、深宇宙任務のための重量級搭載物を収容できると考えられています

最初のブロックIの2段型では70,000kgから77,000kgの打ち上げ能力を有し、また提案にあるブロックIIの最後期型は、サターンV型ロケットの原型機と同様の打ち上げ能力および全長を持ちます


2011年11月、NASAは風洞試験のための5種のロケット形態を選出し、3種の低軌道級の70t、95t、そして140t級を計画しました

2011年5月24日、NASAはコンステレーション計画で行われていたオリオン宇宙船の開発が、多目的有人機(Multi-Purpose Crew Vehicle、MPCV)として続行されると公表しました


第1段


SLSの第1段はすべての機体形態で共通のものであり、基本的には改修されたスペースシャトル外部燃料タンクの後方区画にロケット主推進システム(MPS)を収容して構成しています。


また頂部は段と段の間の構造物を受け入れるために換装されます。


この段では使用される形態に従い、様々な数と型式のRS-25エンジンが利用されます。

ブロックI

延長された第1段に4機のRS-25Dエンジンを搭載します。



ブロックIB

延長された第1段に4機のRS-25D/Eエンジンを搭載します


ブロックIAおよびII

延長された第1段に5機のRS-25Eエンジンを搭載します

ブロック0として第1段に延長が施されず3機のRS-25Dエンジンを搭載する型式が当初計画されました


ブースター

第1段に搭載されたエンジンが発生する出力に加えて、 第1段ロケットで飛行する最初の2分間のために、2基のブースターロケットが第1段ロケットの両側面へ追加装備されます。

初期の形態(ブロック0とI)のSLSでは改修型のスペースシャトル固体燃料補助ロケット(SRB)を使用し、この形態では各々4セグメントから5セグメントと決定されています。

これらのブースターは回収されるものではなく、飛行軌道に沿って大西洋に沈むものとされています。

ブロックIAおよびブロックII形態用のブースターは改良されたブースターの中から選ばれ、さらにアップグレードされたブースターが用いられます。

このブースターは固体燃料または液体燃料タイプのものになる可能性があります。

スペースシャトル用のSRBを製造しているATK社は、ブロック0およびIで使用されるであろう5段式のブースターの、フルスケールかつ全行程の静的試験3件を終了しました。

モーターの開発(DM-1)は2009年9月10日の試験に成功しました。

DM-2は2010年8月31日、DM-3は2011年9月8日でした。

DM-2用のモーターは中心温度が華氏40度(摂氏4度)に冷却され、DM-3用のモーターは華氏90度以上(摂氏32度以上)に加温されました。

他の目的に加え、これらの試験ではこうしたモーターの最大の温度での性能が確認されました

2011年6月17日、エアロジェット社は推力が海面高度で2.2MNに増強されたNK-33エンジンの国内版を開発・生産するため、テレダイン・ブラウン社との戦略的な提携を発表しました。

このブースターはSLS打ち上げ機用のシャトル派生型固体燃料ブースターと対抗し、競争するものです


第2段

SLSは、その多様な形態において、幾種類かの第2段を採用します。

ブロック0

第2段を搭載しません。

ブロックI

デルタ極低温第2段ロケット(DCSS)1基。

これはInterim Cryogenic Propulsion Stage(直訳すれば中間極低温推進段、iCPS)として呼ばれました。

この70tの形態のロケットは現在、探査計画1(EM-1)および探査計画2(EM-2)の2つの任務のみで飛行するものとされています。

DCSSは2012年の時点で好ましい上段ロケットですが、NASAの文書では未だにこの上段を未定とするか決定とするか選ばれていません。

アトラスVもしくはデルタIVの上段ロケットはオプションとして注記されています。

ブロックIA

大型の極低温推進段1基。

SLS用に特別開発され、液体水素燃料と液体酸素を酸化剤として駆動します。

この105tロケットはSLS-3において最初の打ち上げが実施されます。

2012年現在、この機体はNASAにより4種の形態が研究中であり、2種類のみが生産されます。

ブロックIB

CPSは4機のRL10A-4-2エンジンと8.4mのフェアリングで構成され、LEOへは105tが送られます。

ブロックII

完全に開発完了した地球離脱ステージであり、3機のJ-2Xエンジンで駆動されます。

この進化した130tロケットは2030年代になるまで出現しません。

ブロックIAと同様、この機体は4種類の対応する形態がNASAで研究中です。


SRS燃焼試験

米国航空宇宙局(NASA)は2021年3月19日(日本時間)、有人月・火星探査を目指して開発中の巨大ロケット「スペース・ローンチ・システム(SLS)」の、コア・ステージの燃焼試験に成功しました。


SLSの初飛行に向け、最後の関門となるのが「グリーン・ラン(Green Run)」と呼ばれる試験でした。最初のミッションで実際に打ち上げる機体を使って、コア・ステージの全体的な機能や性能などを確認することを目的としていました。

グリーン・ラン試験は2020年1月から始まり、新型コロナウイルス感染症やハリケーンなどの影響でたびたび中断したものの、8つ中7つの試験をクリアしました。そして、その最後の試験項目が、第1段に4基装備されているRS-25の燃焼試験でした。

この試験は、ミシシッピ州にあるNASAステニス宇宙センターにおいて、実際の打ち上げと同じ手順で準備を行い、そして4基のRS-25エンジンに点火し、実際の飛行と同じ時間だけ燃焼させます。ブースターや第2段を装備しないことや、発射台から飛び立たないことを除けば、本番の打ち上げとほぼ同じ状況で試験することができます。

この燃焼試験は当初、今年1月17日に実施されましたが、油圧システムのパラメーターを保守的に設定していたことが引き金となり、予定していた燃焼時間である約8分間(485秒間)にまったく満たない、わずか67.2秒でエンジンが停止。試験としては不十分な結果に終わっていました。


第2回目の燃焼試験は、日本時間3月19日5時37分(米東部夏時間18日16時37分)に点火しました。液体酸素と液体水素を推進剤とするRS-25は、4基あわせて約7117kNもの推力を叩き出しながら、計画どおり8分19秒間の燃焼に成功しました。

その間、4基のエンジンを特定のパターンで動かして推力を調整したり、エンジンの出力を109%まで上げたり、スロットルを下げたり上げたりするなど、さまざまな運用条件が確認され、試験の最低条件の目標はもちろん、エクストラ目標もクリアしました。


SLS打ち上げリハーサル


米国航空宇宙局(NASA)とボーイングは2022年6月24日、有人月探査を目指して開発中のロケット「スペース・ローンチ・システム(SLS)」の、打ち上げリハーサルを完了したと発表しました。


6月20日にリハーサルがスタートしました。

ロケットのタンクに実際に推進剤を充填し、打ち上げのカウントダウン作業、自動カウントダウン装置への切り替え、そしてタンクからの推進剤の排出など、実際の打ち上げで経験する一連の動作が試験、確認されました。

リハーサルはおおむね順調に進んだものの、エンジン点火に向けて圧力を上げる際、液体水素の漏れが発覚しました。

当初はエンジン点火の9.3秒前までカウントを行う計画でしたが、安全装置が働き、29秒前で自動でストップしました。

ただ、それ以外には大きな問題はなく、運用チームはおおむねすべての作業を実施。さらに、これまでのリハーサルではできなかった、カウントダウン終了後の通常の手順として、ロケットのセーフティ化、つまり安全化と、次に打ち上げるための再設定のための一連の作業も実施できました。



SLSはこのあと組立棟に戻され、各種整備のほか、リハーサル中に起きた液体水素の漏れに対処するため、部品の交換が行われる予定となっています。そして打ち上げに向けた準備を整えたのち、8月下旬にも射点に送られることになっています。

打ち上げ日については、部品交換後に設定、発表するとしています。


アルテミスIでは、無人の「オリオン(オライオン)」宇宙船や超小型衛星を載せて月へ向けて打ち上げます。オリオンは月の周回軌道に入り、約3週間ほど滞在したのち地球へ帰還します。



ミッションが無事成功すれば、2024年以降には「アルテミスII」を実施します。オリオンに宇宙飛行士が乗り、SLSで月へ向かって飛行したのち、月の裏側を回って地球へ帰還します。

そして2025年以降、「アルテミスIII」ミッションにより、4人の宇宙飛行士が乗ったオリオンをSLSで打ち上げ。アポロ計画以来となる有人月着陸、そして探査が行われることになります。