奇想天外な外観のSNECMA C450 コレオプテール(Coléoptère)は唯一の円筒翼ジェットVTOL実験機



非常に変わった航空機としてよく挙げられるのが、垂直離着機の試験機である、SNECMA C450 コレオプテールです。


一見して、垂直に離陸するためだけのために考えられた機体で、円筒形状をした翼の形からしてこの機体が水平に飛ぶ姿を想像できません。


C450 コレオプテール(C450 Coléoptère)

SNECMA C450 コレオプテール(C450 Coléoptère)は、1950年代にフランスのSNECMAで開発されたテールシッターと呼ばれるVTOL実験機です。


テイルシッターは垂直離着陸機の一形態で尾部を下にして離着陸します。

名称の"コレオプテール"はフランス語で甲虫を意味する語です。

構造

C450は、スネクマ アタージェットエンジンを垂直に立て、その先端部分にコックピットをつけただけの非常にシンプルな構造のテイルシッターVTOL機です。


半分から下はドラム缶のような形状で一見ダクテッドファンのように見えますが、内部にファンがあるわけではなくこの部分は円筒形の翼として設計されています。

円筒翼は胴体から出ている小さな4つのフィンで固定されており、翼の内部は燃料タンクとなっています。

最下部には車輪と小さな尾翼がついています。


円筒翼は、切れ目や角のない円筒状なので、機体構造の面で強度的に有利で、軽くて丈夫な翼を作りやすいという特徴があります。

このほかにも、機首上向きの垂直離着陸機として左右表裏を同じデザインにしやすく、バランスがとりやすいということもあります。

https://www.facebook.com/watch/?v=678805219706459


垂直離着陸時の操縦はジェットエンジンの推力偏向により行われ、機首には着陸時の機首上げを容易にするための先尾翼が格納されています。



操縦席や飛行制御機構は、機体が垂直姿勢でも水平姿勢でも常に同じ姿勢を保てるよう90°の範囲で角度を変更できました。


地上においては発射台に載せて輸送され、発射台は油圧ジャッキにより機体を色々な姿勢に変更可能になっていました。


経緯

C450はフランスのジェットエンジン開発・製造企業として第二次世界大戦後に設立されたSNECMAで1956年から1958年にかけて開発され、試作機の製造はノール・アビアシオンで行なわれました。 


1958年4月フランス空軍に納入され、1959年5月6日に初飛行に成功しています。


垂直上昇後に水平飛行に転換できたかどうかは不明です。


だが1959年7月25日に9回目の試験水平飛行中操縦不能に陥りパイロットは辛くも脱出しましたが機体は大破しました。

以後予算の折り合いが付かず、コレオプテール・プロジェクトは終了しました


スペック

全長:8 m
全幅:3.2 m
エンジン:スネクマ アター101EV ジェットエンジン(推力 3700 kg) ×1
推力/重量比:
1.4:1
重量(離陸時):3000㎏
最大速度:不明
航続距離:不明
上昇限度:不明
乗員:1名
生産数:1機

アメリカでは、このC-450「コレオプテール」の開発計画に触発されて、「ヒラー VXT-8」という、同じような構造の円環翼VTOL機を1957(昭和32)年に計画しましたが、こちらは実物大模型(モックアップ)が作られただけで終了しています。


残念ながら、SNECMA C450 コレオプテールが、実際に水平飛行している写真も動画もネット上では見つかりませんでしたが、それでは円筒翼によって空を飛べないかということにはなりません。

理屈としては、複葉機の翼端をつなげると、矩形状の翼になり、それを丸くつなげると円筒翼になりますが、そのような凝った翼形にしなくても、断面が上下対象、極端な場合断面がほぼ板状でも、円筒翼は飛びます。

昇降舵によって、適当な、迎え角を維持するようにすれば、理屈上は飛びます。

迎え角によって、正面から見て、リングの上側と下側で上向きの揚力が発生し、左側と右側では迎え角がなくなるので揚力は次第に小さくなりゼロになります。

下は、ラジコンプレーンですが、実際に飛ばしている動画です。円筒が破れてかなりボロボロになっても飛んでいるのが印象的です。