ユーロ NCAPの自動車安全性評価試験

Euro NCAP

ユーロ NCAP(European New Car Assessment Programme、ヨーロッパ新車アセスメントプログラム)はヨーロッパで実施されている自動車安全性試験です。

「ユーロエヌキャップ」と読みます。

アメリカで実施されているNCAPのヨーロッパ版であることより名づけられています。

NCAP(New Car Assessment Programme、新車アセスメントプログラム)は、1979年よりアメリカで実施されている自動車の安全性の評価(自動車アセスメント)です。

また、他の国や地域で実施されている評価にも名称が使用されている。

日本、オーストラリア、韓国、中国、南米においても、同様の衝突テストが実施されています。

 それぞれ国名の頭文字を使って、JNCAP(日本)、ANCAP(オーストラリア)、KNCAP(韓国)、C-NCAP(中国)と呼ばれます。

また、ヨーロッパの場合はEuro NCAPですが、南米の場合はLatin NCAPと呼ばれます。

単にNCAPと言った場合はアメリカでの衝突試験を指しますが、特に区別が必要な場合はUS-NCAPと言われる場合も有ります。


概要

1997年に設置された独立した消費者団体により実施されます。

ヨーロッパ圏内で販売されている自動車の安全性を衝突実験と衝突予防性能試験により検証し、その結果を公表することで、ユーザーに市場で販売される自動車の安全性の目安となる情報として提供し、自動車メーカーに対してより安全な自動車開発を促す目的で行われています。

世界各国で実施されている同様の調査の中ではもっとも知名度が高く権威があるものとされています。

結果の公表までの手順は、次の通りです。

テスト実施団体がテスト車種を決定→テスト→(試験ミスの場合とメーカーの希望がある場合、再テスト)→公表。

(メーカー希望で再テストの場合、費用はメーカーが負担します)



内容

評価基準は頻繁に変更されているので、同一性能の車であっても、評価された年度によって評価が左右されることになります。

評価基準は年々厳しくなっているので、過去に高評価を受けた車であっても、最新の評価基準では低い評価しか得られない可能性があります。

元々は衝突実験のみのパッシブセーフティのみの評価でしたが、近年、アクティブセーフティの重要性が増している事から、衝突予防性能の試験も追加され、評価への比重が高まっています。

2013年から新たに実施されている自動緊急ブレーキ(AEB)評価は、低速域試験(AEB City)と高速域試験(AEB Interurban)の2項目があります。

低速域試験は10〜50km/hで静止した対象物への減速性能が試験されます。

高速域試験は静止した対象物(30〜80km)、前走する対象物(30〜80km)、50km/hで減速する対象物に対して行われ、警告機能でブレーキを踏んだ場合、ドライバーがブレーキを踏まずにシステムがブレーキをかけた場合の減速性能が試験されます。

「AEB City」項目は自動緊急ブレーキが標準装備でないと0点とされ、オプション装備でも減点されないIIHS(米国)やJNCAP(日本)に比べて厳しい基準となっています。

2014年から最高評価である5つ星を取るには自動緊急ブレーキが必須となっています。

2016年からは対歩行者性能の試験も追加されています。


カテゴリー

ユーロ NCAPでは、サイズごとにカテゴリー分けをされています。

1)スーパーミニ(例:フォード・フィエスタ)

2)スモールファミリーカー(例:BMW・3シリーズ)

3)ラージファミリーカー(例:トヨタ・アベンシス、フォルクスワーゲン・パサート,スバル・レガシィ)

4)エグゼクティブカー(全長4.8メートル以上の車種 例:メルセデス・ベンツ・Eクラス、アウディ・A6、BMW・5シリーズ)

5)ロードスター(例:マツダ・MX-5、ホンダ・S2000、BMW・Z4)

6)スモールオフロード4x4 (北米でのクロスオーバーSUVカテゴリー 例:マツダ・CX-5、三菱・アウトランダー)

7)ラージオフロード4x4 (北米でのクロスオーバーSUVカテゴリー 例:ランドローバー・レンジローバー、ジープ・グランドチェロキー)

8)スモールMPV(例:トヨタ・アーバンクルーザー)

9)ラージMPV(例:フォルクスワーゲン・シャラン、クライスラー・ボイジャー)

10)ピックアップ(例:いすゞ・D-MAX)

11)ビジネス&ファミリーバン(例:フォード・トランジット)


EURO NCAP の評価事例

下記のサイトへアクセスすると、EURO NCAP の評価事例を確認することができます。


2022年、フォルクスワーゲン・ポロのユーロNCAP安全性評価試験のビデオです。

JNCAP(参考:ポロ/独立行政法人自動車事故対策機構 ナスバ(交通事故) (nasva.go.jp))と比較してみるとよく分かります。

JNCAPの映像の方が分かり易く整理されています。

こちらは2020年、トヨタ・ヤリスのユーロNCAP安全性評価試験のビデオです。


同じくJNCAPの試験映像です。

ユーロNCAPの方が試験内容が厳しくなっています。

2022年以降は、JNCAPもユーロNCAPと同様の試験内容が追加されています。

上は2022年日産サクラのJNCAPの試験映像です。試験項目が2021年よりも多くなり評価が厳しくなっています。

上は2022年フォルクスワーゲン・ゴルフのユーロNCAPの試験映像です。


上は同じく2022年フォルクスワーゲン・ゴルフのJNCAPの試験映像です。

フォルクスワーゲン・ポロの試験映像と異なり、ゴルフは、ブレーキ踏み間違いによる衝突被害軽減ブレーキ(前後)が2022年時点で、まだ装備されていないのか、ユーロNCAP、JNCAPのいずれでも評価映像がありません