遺贈寄付をした人々

遺贈寄付をした人々の事例について、調べてみました。

最近色々な理由で遺贈寄付される方が多いと、言われますが、実際の事例を見ることにより参考になるのではないかと思います。


2024年2月19日 NHKクローズアップ現代で「遺贈寄付」について報道

森永葉子さん(仮名・79)

2023年、遺贈寄付を決めた森永葉子さん(仮名)、79歳です。定年まで仕事を勤め上げ、今は趣味の語学の活動などを楽しんでいます。

結婚しておらず、子どもがいない森永さん。自分の死後、遺産が国に納められた場合、本当に有効に使われるのか疑問を感じたといいます。・定年まで商社でお仕事。海外のプロジェクトをサポート。

森永葉子さん(仮名)
「国だと使われ方が分からないですよね。税金(国庫)に持っていかれるのはちょっと嫌だなっていう感じでしたから、どっかいいところ、遺贈というか寄付したい」

どこに遺産を託すのか。遺贈寄付のサポートを行っている企業に相談を持ちかけました。

森永葉子さん(仮名)
「私、若いころから商社に勤めてて、海外の特にプロジェクトの関係をアシストしていたので、それで海外がすごい近いものになっていまして」

仕事を通じて途上国が抱える問題などに関心を持つようになっていた森永さん。気候変動や紛争によって苦しむ子どもたちの姿をニュースで見る中で、その助けになりたいと考えました。

遺贈寄付をサポートする企業 担当
「例えばカンボジアとラオスに病院、子ども専門の病院を設立して」

森永葉子さん(仮名)
「カンボジアには友達もいます」

専門家のサポートのもと、公証役場で遺言書を作成。マンションの売却益など、亡くなった時に余った財産を途上国で教育支援を行う団体などに寄付することにしました。

森永葉子さん(仮名)
「今まで見てきた世界に目を向けて、戦争も多いですし、だから難民とかいろいろありますし、少しでも役に立てれば、お役に立てればすごくうれしいなって感じですね」


・結婚しておらず、子どもはいない

・自分の死後、遺産が国により有効に使われるか疑問(国だと使われ方がよく分からない)

・遺贈寄付をサポートする企業に相談

・気候変動や国際紛争で苦しむ子供たちの助けになりたい

→カンボジアとラオスに病院、子どもの専門の病院を設立するようなNPOを紹介される

・専門家のサポートの下、公正証書遺言を作成し、亡くなった後はマンションの売却益を含め、途上国への支援をするプラン・インターナショナル・ジャパンに全額遺贈寄付することにした。

・少しでもお役に立てればうれしい。


中村まさ子さん(70)

中村まさ子さん、70歳。2023年、手書きの遺言書を作成しました。金額は30万円。無理なく残せる額におさえました。

「財産なんて無いですけど、私のお小遣いをちょっと残そうかなっていう感じで」

遺贈寄付をまさ子さんにすすめたのは、近くに住む長男の雄一郎さんでした。親の財産は子どもが継ぐという価値観にはこだわっていないといいます。

中村雄一郎さん(43)
「手元に残るんであれば、それは両親のお金なので。両親たちが自分たちで使ってくれればいい。それまで『こっちによこせ』なんて全然思っていなかったですね」

どこに遺産を託すのか。これまで専業主婦として3人の息子を育て、家庭中心に生きてきた、まさ子さん。地域や社会にも役立つことがしたいと考えていました。

中村まさ子さん
「ずっとね、専業主婦でしたし、とてもそんなことを考える余裕もなく、自分の生きた証しじゃないけど、本当に影の力でもちょっとでも(世の中の)力になれればと思っています」

寄付先として選んだのは、孫たちが通う近所の子ども食堂でした。ここは、ボランティアのスタッフや寄付で集められた食材によって運営が支えられています。

代表 若月かず子さん
「子どもさん全員無料にしたので、相当赤字がございます。でもなんとか頑張ってます」

中村まさ子さん
「高齢者ばっかりぬくぬくしてても。子どもたちに役立ててくれればなと思って」

家庭にさまざまな事情を抱えながら集まってくる子どもたち。よりどころとなる居場所を自分の死後も守り続けてほしいとまさ子さんは考えたのです。

中村まさ子さん
「いつ逝(い)っても、私の遺志は残していけるんだなっていうのができたんで、あの子たちが子ども食堂いった時に『ばあちゃん、ここのこと考えてくれたんだ』と思ってくれれば」

中村雄一郎さん
「母親が役に立ったなと思えたら、それはすごい大きな、私にとって喜びになるだろうし、誇りに思えることなのかなと。先のことなので想像でしかないですけど」


・子どもがいる

・手書きの自筆証書遺言を作成

・30万円の遺贈寄付を決意(お小遣いを残しておこうかなという気持ち)

・長男さんが遺贈寄付を勧める。「手元に残るお金は両親のお金。こちらに寄こせとは思わない。」

「母親が役に立ったなと思えたらそれはすごい大きな私にとっても喜びになるだろうし、誇りに思えることなのかな。」

・地域や社会に役立ちたい。自分の生きた証、少しでも(世の中の)力になれればと思っている。

・孫たちが通う子ども食堂への遺贈寄付を決意。その子ども食堂は子ども全員を無料にしたので赤字になっている。遺贈寄付が子ども達に役立って欲しい。様々な家庭の事情がある子ども達の居場所を守り続けてほしい。

塩﨑須美さん(2年前に死去)

広島県のNGOであるピースウィンズ・ジャパンでは、施設の初期費用が壁となる中、ある女性から、およそ1億円の遺贈寄付が寄せられました。

2年前に亡くなった塩﨑須美さんは、大好きな犬のために自身の財産を使ってほしいと遺言を残していました。


塩﨑さんを担当した司法書士
「犬が好きだって言うことで、動物愛護団体に全額寄付したいっていう」

塩﨑さんからの遺贈寄付で新たに開設された譲渡センターです。オープンから4か月、すでに20頭以上が新たな家族のもとにつながっています。

譲渡センターに掲げられた、塩﨑さんの支援に感謝するプレート。この団体は、遺贈寄付には金額の高さ以上の意味があると考えています。


・1億円の遺贈寄付

・犬が好きなので動物愛護団体に全額寄付を希望

・この寄付を基に新たな犬の譲渡センターが作られる。譲渡センターには支援を感謝するプレートが掲げられている。

産経ニュース「社会のため」広がる遺贈

今年3月、遺贈を決めたという大阪市西区の男性(83)は「安心している。もう、いつどうなってもかまわへん」と安堵(あんど)の表情を浮かべながら、経緯を教えてくれた。

男性はマンションで1人暮らし。今年初めに食道がんと判明し、死を意識するようになった。「前から遺言状を書かなければと考えていたが、急いで書こうと思った」と、遺産の使い道を考え始めた。

結婚歴はあるものの子供はいない。亡くなれば姉と妹に遺産が渡ることになるが、「社会のことを考え、将来を担う子供たちのために使いたい」と思った。

そんなとき、新聞で見かけたのが遺贈についての記事。末尾に記されていた遺贈寄付のサポート会社に連絡を取り、コンサルタントに遺贈寄付の相談をした。

4月にがんの手術を行ったが、その前に遺言書を作成。死亡時に遺産がどのくらい残せるか分からないため、金額は明記せずに遺産を3等分し、姉と妹に3分の1ずつ渡した後、残る3分の1を遺贈する決断をしたという。

遺贈先には3つの団体を選んだ。がんを患った経験から小児がんや重い病気と闘う子供たちを支援する団体、虐待被害にあった子供たちをサポートする団体、そして自身が住む大阪市西区役所。西区役所には、子供が関連する活動の支援に使ってほしいと希望した。

実は、男性が相談したサポート会社「レディーフォー」(東京)は今年、西区役所と包括連携協定を締結。相談者の希望と合えば遺贈先として西区役所を紹介することなどを取り決めた。西区の三村浩也区長は「今後、遺贈されたものは教育やまちづくりなどに活用したい」と述べる。

男性も「当初は遺言状の書き方も寄付先もよく分からなかった。自分で調べるのも大変なので、相談しながら遺贈先を選べてよかった」と話していた。