配偶者が認知症のおひとり様になったら

 


子供のいない夫婦で、遺産相続時或いはその後に、配偶者がおひとり様の認知症になったら、どのようなことが考えられるのかネットで調べてみました。


認知症

2025年には、65歳以上高齢者の5人に1人が認知症になると予想されています。

高齢になるほど認知症になる確率が高くなり、80代前半では約2割、80代後半では約4割、90代前半では約6割、95歳以上では約8割もの人が認知症になるとのデータがあります。

認知症は、突然自分のことがすべてできなくなってしまうわけではありません。

軽度から重度まで、次第に症状が進行していく疾患です。

認知症の進行程度によって、取り得る対策が異なってきます。

認知症になったからといって、ひとり暮らしができなくなるわけではありません。

家族が近くにいなくても医療や介護・福祉のサービスを組み合わせ地域の方の支援を受けて、ギリギリまでひとり暮らしを続けることができます。


介護保険制度

介護保険制度は、おひとりさまが認知症になっても在宅で暮らすためには必要な制度です。

さまざまな介護サービスや福祉サービスがあり組み合わせをして利用することができます。

実際にサービスを受けるには、まず住民票のある市区町村の窓口で要介護(要支援)認定の申請を行います。

市区町村のホームページなどで確認できます。

また、市区町村の担当窓口で介護保険のことがわかる冊子なども用意されています。

地域包括支援センターが申請代行を行ってくれるので身体に自信がなくなってからの申請の場合は地域包括支援センターに相談をすることもできます。


地域包括支援センター

地域包括支援センターは、地域で暮らす高齢者を介護、福祉、健康、医療の面から総合的にサポートするために市区町村から委託を受けて運営する公的な相談窓口となります。

保健師(又は、地域保健等の経験のある看護師)・社会福祉士・主任ケアマネジャーの専門職員が各専門分野の視点から連携を行っています。

自分が住む地域で担当の地域包括支援センターが決まっているためわからないときは市区町村の窓口で聞くと教えてもらえます。

また、市区町村のホームページにも掲載されているので確認できます。


おひとりさまを支えるサービス

要介護(要支援)認定申請を行うと、訪問調査員が自宅や病院に来て要介護(要支援)認定に必要な調査を行います。

かかりつけ医の意見書が必要となるので、かかりつけ医を見つけておくことも大切になります。

訪問調査員とかかりつけ医の意見書から介護認定審査会で、介護が必要かどうか、またどの程度の介護が必要かなどについて、保健・医療・福祉の専門家によって審査・判定がされます。

判定は「要支援1・2」「要介護1~5」の区分で示され、介護度に応じて支給限度額が決まり1割~3割の自己負担でサービスが受けられるようになります。

ケアマネジャーが、どのような介護サービスを受けるとよいかを本人や家族と相談しケアプラン(サービス計画)を立て、実際に介護サービスを行う施設や事業所に連絡・調整を行い介護サービスの利用を始めることができます。


日常生活自立支援事業/社会福祉協議会

ある程度、判断能力がある段階で利用できるのが「日常生活自立支援事業」です。

全国の市町村にネットワークのある社会福祉協議会が提供しているサービスです。

「福祉サービスを受けたいが、どうしたらいいかわからない」「介護保険関係の書類の書き方がわからない」「使いすぎたり、通帳類の保管場所を忘れてしまうなどのお金の管理に困っている」といった人が利用できます。

日常生活自立支援事業の対象者は、判断能力が不十分な人(認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等であって、日常生活を営むのに必要なサービスを利用するための情報の入手、理解、判断、意思表示を本人のみでは適切に行うことが困難な人)、本事業の契約の内容について判断し得る能力を有していると認められる人となっています。

日常生活自立支援事業では、買い物や、税金、社会保険料、電気、ガス、水道等の  公共料金の支払いの手続き援助といった日常的なお金の管理や、通帳やハンコ、デイサービス、ホームヘルパーといった福祉介護サービスの契約手続き援助、重要書類の管理や契約の代行を支援してくれるサービスです。

また、住宅改造、居住家屋の貸借、日常生活上の消費契約及び住民票の届出等の行政手続に関する援助等も支援してくれます。

「元気に暮らしているのか?」「困ったことはないのか?」といった定期的な訪問による見守りから生活変化の察知や孤独死の回避、生活上で何か大きな買い物をしたいときに相談、バリアフリー住宅へのリフォームが必要になれば手配もしてもらえます。

日常生活自立支援事業の利用方法としては、全国すべてに設置されている社会福祉協議会と契約を結び、生活支援員に頼む流れになっています。

利用の流れは以下の通りです。

1.最寄の社会福祉協議会に連絡

2.相談・打ち合わせ

3.支援契約書の作成

4.契約

5.サービス開始

相談や支援計画の作成にかかる費用は無料ですが、福祉サービス利用手続き、金銭管理などのサービスは有料です。

料金は実施主体で異なりますが、訪問1回あたり平均1200円とのこと(厚生労働省のホームページより)です。

重要物の保管は1か月1000円程度です。

単身者だけでなく、夫婦世帯でも支援を受けることができます。

本人に、社会福祉協議会と契約できる判断能力がなくなったら、本人にふさわしい援助につないでくれたり、「成年後見制度」の利用を支援してくれたりもします。


地域包括支援センターと社会福祉協議会の違い

社会福祉協議会は、市区町村ごとに存在し、市役所と連携して福祉に関する事務手続きを行います。

一方、地域包括支援センターは高齢者を中心に包括的な福祉サービスを提供する機関です。

認知症が疑われたら、最初に相談するところが、地域包括支援センターであると言えます。

地域包括支援センターは市町村など行政が管轄していることが多く、社会福祉協議会は社会福祉法人つまり民間の団体です。

地域包括支援センター」と「社会福祉協議会」の違いは以下の通りです。

対象者の違い

「地域包括支援センター」は高齢者に関する相談の窓口であるのに対し、「社会福祉協議会」は高齢者に限定していません。地域包括支援センターには、主任介護支援専門員(主任ケアマネージャー)、社会福祉士、保健師、等が配置されています。

準拠する法律の違い

 「地域包括支援センター」は包括的支援事業法に基づき、第1号被保険者(65歳以上)を対象に包括的支援事業を包括的に実施する地域の中核的機関であるのに対し、「社会福祉協議会」は民生委員法に基づく民間団体であり、社会福祉を目的とする事業の、調査、企画調整、助成、普及宣伝などを行います。

社会福祉協議会は、それぞれの都道府県・市区町村でその地域に暮らす方が安心して生活をしていくことができるように、民生委員・児童委員、社会福祉法人・福祉施設等の社会福祉関係者、保健・医療・教育など関係機関の参加・協力のもとで様々な活動を行っています。

簡潔に言えば、社会福祉協議会は市役所と連携して事務手続きを担当し、地域包括支援センターは高齢者を中心に包括的な福祉サービスを提供しています。

協力関係

地域包括支援センターと社会福祉協議会は、基本的に協力関係にあり、いずれも地域の福祉活動を推進し、住民の福祉向上を目指して協力しています。

情報の共有

地域包括支援センターは、高齢者や障がい者などを対象にした福祉の相談窓口であり、具体的な支援を提供します。

この際、必要な情報を社会福祉協議会と共有し、より効果的な支援を行います。

福祉施設やサービスの連携

地域包括支援センターが提供するサービスや福祉施設と、社会福祉協議会が運営する施設やサービスとの連携が重要です。

例えば、特定の施設やサービスが必要な場合、両者が連携して利用者を支援してくれます。

名古屋市福祉協議会は、名古屋市認知症相談支援センターを運営し、認知症の段階ごとに利用できる制度など認知症に関する情報を発信しています。

特徴

地域包括支援センターは生活自立介護支援、社会福祉協議会は金銭管理支援を特徴とします。


デイサービス・訪問介護・訪問入浴介護・訪問看護

住み慣れた我が家で最後まで過ごしたいと思う人は多いです。

せっかく誰にも気兼ねせずに済む自由なひとり暮らしをしてきたのに、いまさら老人ホームや介護施設には入りたくないと思う人もいます。

そんな場合は、訪問介護やデイサービス(通所介護)を利用します。

住んでいる地域にどんな事業所があるのか、どんなサービスを受けられるのかについては、市区町村の担当窓口で教えてくれます。

訪問介護とは、介護福祉士やホームヘルパーなどの専門家に自宅に来てもらい、食事や入浴、排泄、衣類の着脱といった日常生活の介助や、料理や洗濯などの生活援助をしてもらうサービスです。

買い物も頼めます。ただし、要介護認定されていないと、訪問介護サービスを利用する際に介護保険が適用されないので全額自己負担となり、かなり高額になってしまいます。

訪問入浴介護は、浴槽を積んだ入浴車で自宅を訪問し、介護職員と看護職員が入浴の介助を行います。

訪問看護は、主治医の指示に基づいて、訪問看護ステーションや病院・診療所の看護師が自宅に訪問し、健康上のチェックや療養上の世話を行います。

介護が必要な状態で自宅にひとりでいるのが不安な場合には、日帰りの通所介護(デイサービス/デイケア)を利用するとよいです。

デイサービスでは、利用者本人が自宅から施設へ出向けば(送迎もあります)、専門スタッフが食事や入浴などの介護サービスをしてくれます。

このように日帰りで介護老人保健施設や介護医療院、医療施設で機能訓練(リハビリテーション)を受けることができます。

成年後見制度

判断能力が正常、やや怪しい、かなり低下まで使えるのが「成年後見制度」です。

この制度はさらに「任意後見制度」と「法定後見制度」に分けられます。


任意後見制度

本人に十分な判断能力があるうちに利用できるのが、この任意後見制度です。

本人が重度の認知症になってしまった場合には、この制度は利用できません。

健康で判断能力があるうちに契約を結んでおくことが重要です。

将来、判断能力が不十分な状態になったときに備えて、あらかじめ本人が選んだ代理人(任意後見人)に、自分の生活や療養看護、財産管理に関する事務について代理権を与えるというものです。

だれを後見人とするかは本人が決定することができます。

家族、友人、弁護士や司法書士などの士業、相続コンサルタントなど、自分が信頼できる人に依頼をします。

契約内容は自分で決めることができます。

契約内容に書かれていないことはできないので契約内容をしっかり確認をして作成します。

本人の判断能力が低下したときに、任意後見受任者が家庭裁判所に、任意後見監督人の選任の申し立てを行い、任意後見監督人が選任されると、任意後見契約が開始されます。

この任意後見監督人は、契約(任意後見契約)で決めた事務について、本人に不利益なことがないように任意後見人を監督します。

これによって、本人の意思に沿った保護・支援をすることができます。

任意後見制度を利用するには、原則として、公証役場で契約を結ぶ必要があります。

かかる費用は次のとおりです。

・公正証書作成の基本手数料 1万1000円

・当期嘱託手数料 1400円

・登記所に納付する印紙代 2600円

・その他(本人たちに交付する正本などの証書代、登記嘱託書郵送の切手代など)

公正証書作成が完了し、任意後見が開始された後、任意後見人と任意後見監督人へ支払われる報酬もあります。

任意後見人への報酬は、一般の人が任意後見人になる場合の報酬は3万円以下で設定されることが多く、専門家に依頼する場合は、月3万~5万円の報酬が相場だと言われています。

任意後見監督人は弁護士や司法書士が選任され、この監督人にも月1万~2万円程度の報酬が掛かります。

報酬はいずれも本人の財産の中から支払うこととなります。


法定後見制度

判断能力が不十分な状態から、著しく不十分、常にかけている状態に利用できるのがこの法定後見制度です。

身寄りのない、認知症がかなり進行したおひとり様の場合、利用できる制度は、現在のところこの法定後見制度の一択になります。

身寄りもなく入院や入所の際の契約をどうするかなど、周囲の人が心配して、家庭裁判所へ成人後見人、正確には法定後見人選任の申立てを行うことが多いようです。

本人にとって最も適任だと思われる人が家庭裁判所によって選出されます。

例えば、親族や弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門家が選任されることがあります。

選ばれた後見人等が「財産管理」と「身上監護(しんじょうかんご)」を行います。

「身上監護」とは、具体的には、介護保険などの障害福祉サービスの利用手続き、入院の時の病院の手続きや支払いなどをすることです。

「後見」には、3つの制度が用意されています。

それぞれの対象者は以下の通りです。

補助→重要な手続き・契約の中の一部に不安がある方

保佐→重要な手続き・契約など全般に不安がある方

後見→多くの手続き・契約が困難な方

なお、法定後見制度の申し立てにかかる費用は、収入印紙代などを含めて3,000円程度となります。

家庭裁判所に選ばれた成年後見人・保佐人・補助人は、本人の利益を考えながら契約などの法律行為をしたり、本人が法律行為をするときに同意を与えたり、本人の同意を得ない法律行為を取り消したりします。

それにより、本人を保護・支援します。

法定後見制度を利用するには、本人の住所地の家庭裁判所に後見開始の審判などの申し立てをする必要があります。

申し立ては、本人、配偶者、4親等内の親族などが行いますが、身寄りがいなくなってしまったおひとりさまは、市町村長が申し立てを行ってくれます。

申し立てから法定後見の開始までは、3~4カ月かかります。

また、かかる費用は次のとおりです。

いずれも別途、連絡用の郵便切手、医師による鑑定料(後見と保佐に必要。10万円程度)がかかります。

1)後見 申立手数料(収入印紙)800円+登記手数料(収入印紙)2600円

2)保佐 申立手数料(収入印紙)800円×申立件数+登記手数料(収入印紙)2600円

3)補助 申立手数料(収入印紙)800円×申立件数+登記手数料(収入印紙)2600円

いずれのの制度を利用するにしても、お金がかかるので、老後資金は余裕を持って準備する必要があります。


認知症になったおひとり様の場合は本人又は区長が家庭裁判所へ後見人選任を申し立て

妻が先に亡くなった時に、夫が認知症になっていたら、成年後見人制度の法定後見人のみが選択肢となります。

仮に夫がおひとり様になってから、しばらくして認知症になった場合も同様です。

しかし、後見人をつけて欲しいと家庭裁判所へ申し立てできる人は、民法で定められており、だれでも申し立てできるわけではありません。

本人または本人の四親等以内の親族(配偶者、子、孫、両親、兄弟姉妹、従兄弟、甥、姪など)が、申し立てを行うのが一般的です。

おひとり様の場合は、たとえ甥姪がいても、長期に渡り疎遠であると、申立人になるのは難しいかもしれません。

しかしどんなに親しい交流があっても知人や近隣の人は申立てをすることはできません。

ある程度の判断能力が残っていれば、本人が申し立て可能ですが、認知症がある程度進行していると、申立て書類を作成することは本人だけでは難しいので、実際の本人申立ては地域包括支援センターや社会福祉協議会の支援を受けて行うことも可能です。

もう一つの手段としては、市区町村長が申立てを行うこともあります。

家庭裁判所への申立人の統計上では、本人申立て20.2%に対し、市区町村長申立ては23.9%と最も多く、決して珍しいケースではありません。

本人に資力がない場合は、申立て費用の助成がある自治体もあります。

火災やゴミ屋敷等を心配する近隣の住民や、居住の大家さんから連絡が行き、区の社会福祉協議会、地域包括支援センターなどの社会福祉団体の支援に依って区長申立てが行われるようです。

家庭裁判所により後見人が選任されると、1日3回のヘルパーの手配、訪問看護の手配、特養の申し込み、等々が行われることになります。

市区町村長申立ての場合のデメリットとしては支援内容の検討や、本人に本当に申立てをしてくれる親族がいないかを確認するための親族調査といった時間がかかる点が挙げられるようです。

自治体によっても、親族調査等の進め方や助成内容については異なることがあります。


老人ホーム

おひとりさま高齢者の方が認知症になってしまった場合には、老人ホームの利用が考えられます。

おひとりさまの場合、認知症が進行するとどうしても一人で生活を送るのは困難になっていく可能性が高いです。

費用はそれなりにかかりますが、老人ホームには介護スタッフがいるので身の回りの世話をしてくれます。

ただ、多くの老人ホームでは、入居に際して保証人が必要になります。

おひとりさまの場合には、身元保証サービス会社を利用することで、保証人を頼める人がいない場合でも老人ホームを利用することができます。

身元保証サービス会社とは、身元保証人の役割代行サービスを運営する民間企業やNPO法人のことです。

身元保証サービス会社は、弁護士・司法書士・行政書士などの専門家と連携し、保証人がいない人の身元保証や連帯保証を引き受けてくれます。

具体的には、身元身元保証サービス会社を利用することで、老人ホーム入居に必要な「保証人」「身元引受人」の役割を一通りカバーしてもらうことができます。

身元保証人に代わり、病院・介護施設入居時の身元保証・生活支援・死後事務委任契約など、保証会社と契約を結ぶことにより、必要なサービスを利用することが可能です。

身元保証サービスは会社によって、費用・サポート内容が異なるため、ご自身が利用したい

内容に合う会社を選ぶことが大切です。

おひとりさまで老人ホームを利用したいけれど、保証人になってくれる親族が身の回りにいないという場合には、身元保証サービスの利用が推奨されます。


グループホーム

グループホームとは、認知症の高齢者が食事や入浴、排泄などの介護サービスを受けながら、少人数で共同生活する住まいをいいます。

介護保険制度では地域密着型サービスに分類されているため、入居希望者の住民票登録がある市区町村の施設しか利用できません。

定員は1軒(ユニット)で5人以上9人以下、最大で2ユニット18名までと定められているほか、介護スタッフは、日中は入居者3人に対して1人以上、夜間や深夜の時間帯は1軒あたり1人以上の配置が義務付けられています。

共同生活といっても、入居者は原則7.43㎡以上(和室の場合は4.5畳以上)の個室で寝起きし、食堂や居間、浴室などは共用で利用します。

入居金は無料から50万円程度まで、施設によって異なりますが、月額利用料は家賃、管理費、食費込みで十数万円が一般的です。

そのほか、介護保険の1割(収入に応じて2割または3割)負担分や医療費が別途かかります。

しかしグループホームでは、介護スタッフが胃ろうや痰の吸入などの医療ケア、さらには看取りには対応できないことが少なくありません。

認知症が進行し、共同生活に支障をきたしたり、寝たきりになったりすれば退去させられることもあります。


特別養護老人ホーム

介護が必要になり、特別養護老人ホーム(特養)に入りたくても、「入所の申し込みをしたら何十人待ちと言われた」「何年も待たないと順番が回ってこない」などといった体験談を見聞きしたことがある人は多いはずです。

特養の入所待ちが多いことはよく知られています。

特養に入所できる人は原則として、手厚い介護が必要で、自宅での介護では負担が大きい「要介護3」以上の高齢者に限定されていますが、認知症の場合には要介護1や2でも特例として入居できる可能性があります。

申し込み順に入所できるわけではなく、要介護度が高い人や、ひとり暮らしで介護する人がいないなど、緊急性の高い人が優先されます。

ここ数年、特養以外の選択肢が増え、入居待機者数や平均待機日数は減少しています。

特養に入所したい場合、市区町村の福祉担当窓口か、直接施設に申し込みますが、居住自治体以外の複数の施設に申し込むことも可能です。

ただし入所定員が29人以下の地域密着型特養は、住民票がある自治体の施設でなければ申し込めません。

また、同じ自治体が管轄する特養でも、同一自治体内に特養があるとは限りません。

たとえば新宿区では、管轄する特養は区内以外に、青梅市や福生市、立川市などにもあります。

特養は、入所者の健康状態が悪化しない限り、「終の住みか」として利用できます。

ただ、医師が常駐している特養はほとんどなく、痰の吸引や胃ろう、経管栄養や在宅酸素療法などの医療ケアには対応できないことがあります。

入所時にこうしたケアが必要な場合や3カ月以上入院して不在になった場合、退去しなくてはならないことが一般的です。

しかし2006(平成18)年4月の介護保険制度改正で、特養やグループホームなどで看取りをすれば、介護報酬に「看取り介護」を加算することができるようになり、最近では看取りを積極的におこなう施設が増えています。

こうした施設では、認知症が進んで口からものを食べられなくなったときに胃ろうをするのか、呼吸停止後に心肺蘇生をするのかなど、入所者や家族の希望をあらかじめ把握します。

一方、有料老人ホームは、元気な人が入居できるものと、前項で述べたように介護が必要な人が入居できるものがあります。

同じ老人ホームという名称がついていますが、特別養護老人ホームと違い、有料老人ホームの場合、入所まで何年も待つということはまずありません。

また有料老人ホームは費用がかかるというイメージがありますが、最近では、特養同様、入居一時金を徴収しない施設が増え、毎月の負担金も特養と変わらない有料老人ホームが多くなってきています。


孤独死問題

もしも身寄りがいない人が自宅で亡くなった場合、連絡できる親族がいないため、自治体が火葬から埋葬まで対応することになっています。

「行旅死亡人」と呼ばれ、法律で自治体が対応するように定められています。

警察や行政が親族を探し、見つからなければ自治体と連携している葬儀会社が火葬を行い、最後は無縁墓地に納骨されます。