逢坂冬馬の「同志少女よ敵を撃て」を読んで


本作は本屋大賞受賞作です。

主人公は、母親と2人で半農半猟の生活を送っていた16歳の少女セラフィマです。

彼女の住むモスクワ近郊の「イワノフスカヤ村」がある日、ドイツ軍に襲われ、彼女以外の村人達は全員を惨殺されます。

その時に、ドイツ軍の士官と思われる男を猟銃で狙った母親はドイツ軍狙撃兵に撃たれて即死しました。

セラフィマもドイツ兵に捕らわれて、あわやという時に赤軍に救われました。

セラフィマの前に現れた赤軍の女性上級曹長イリーナは、
セラフィマの家族の写真を窓から投げ捨て、家屋や無残に積み上げられた村人の死体を即座に燃やすよう指示しました。

セラフィマは、母親を殺したイエーガーというドイツ軍狙撃兵と赤軍
上級曹長イリーナへの復讐を誓います。

彼女は、イリーナが教官長として采配する中央女性狙撃兵訓練学校の先行的分校へ連れてこられ、そこで狙撃兵として訓練を受ける日々を送ることになります。

彼女と同様に家族を失った少女や女性達とともにイリーナの猛特訓を受けて、狙撃兵として技量を上げていきます。

卒業試験として本校生徒との対抗試合までに残ったのはわずか4名でした。

セラフィマと同年齢18才でモスクワ射撃大会優勝者であった貴族出身のシャルロッタ、14歳にしか見えない年齢不詳で訓練学校で最も秀でた技量を示したカザフ人少女アヤ、イリーナ教官長より2才年上で28才、ドイツ軍により夫と子供を失ったママことヤーナ、の4人でした。

ウクライナのコサック家庭出身で家族全員を失ったというセラフィマと同年代のオリガは、秘密警察の要員で訓練学校に潜んでいたことがイリーナに見破られ対抗試合から外されましたが、その後も監視のため小隊に加わっていました。

卒業試験の対抗試合に見事勝利した後、狙撃専門小隊として組織され、イリーナが率いる小隊の一員としてセラフィマたちは、ウラヌス作戦、スターリングラード攻防戦、等へ投入されます。

その間、ウラヌス作戦では最も多くの敵を倒したアヤが敵弾により絶命します。

途中で小隊に加わった同世代の女性衛生兵ターニャは、タバコを吸う変わった看護師でしたが、戦いに傷ついたセラフィマを慰めてくれました。

スターリングラード攻防戦では、市内の防衛拠点で生き残っていた少年のような元大学生狙撃兵ユリアンと子供を救うために命を失った兵士ボグダンの話が語られています。

そのような戦場を経て、セラフィマたちは、ドイツ兵を撃ち取ったスコアを上げ戦績を上げていきます。

そして、セラフィマは物語のクライマックスであるケーニヒスベルクの戦いに参戦します。

ケーニヒスベルクは、現在のカリーニングラードであり、ロシアの飛び地として知られた地です。

セラフィマは、撤退しようとするドイツ軍に捕虜として捕らわれますが、辛くも脱出して、塹壕から援護射撃するオリガに助けられます。

しかし、その時に尖塔から狙撃する仇敵イエーガーによってオリガは頭部を撃ち抜かれ絶命します。

セラフィマは、オリガの使っていた銃で、尖塔に潜むイエーガーを陽動策を使って撃ち取りました。

イエーガーの死を確認するため、イリーナと登った尖塔から、銃のスコープを使って街を見下ろした時、かつて村で将来の結婚相手と噂された幼なじみミハイルが、ドイツ娘を強姦しようとする光景を目にしました。

セラフィマは、逡巡しながらも、狙撃手学校でイリーナに何のために戦うかと問われ「女性を守るため」と答えた時のことを想いながら、狙撃銃で彼のこめかみを撃ち抜きました。

ケーニヒスベルク陥落後、しばらくしてベルリン陥落、ヒットラーの自殺、ドイツの無条件降伏を経て、独ソ戦は終結します。

物語は、戦後のセラフィマ、イリーナ、シャルロッタ、ヤーナ、ターニャ、のその後を語って終わります。