地下駐車場床面の補修

 

私の住むマンションの地下駐車場の床面のひび割れが増えたので、補修が必要ではないかということで、業者に見積もりを取ったところ高額であることが分かり、継続検討となりました。

そもそも、どの程度であれば補修が必要なのか、業者から出された見積が妥当なのか否か、地下駐車場床面の補修に関して前知識が無いと業者の言いなりになってしまうのが落ちです。


床面の劣化

駐車場のコンクリートは、中性化や収縮により、年数が経つにつれてひび割れが生じて劣化し、その耐久性が弱くなっていきます。

劣化状態が深刻になる前にも、小さな亀裂やひび割れを修繕し、塗床材を塗布する工事を施すことがとても大切でとされます。

一般的に、駐車場の床にはコンクリートが打設されていることが多いです。

コンクリートには、ホコリの発生を抑えたり、自動車から漏れるオイルのシミを付きにくくしたりする効果があります。

また、仕上がりの美しさや、タイヤによる摩擦や経年劣化にも強いという特徴もあることから、駐車場の床材にはコンクリートが選ばれています。


駐車場で用いられる主な床材

アスファルト

大型の駐車場など、主に広い土地を利用した駐車場の施工に向いています。

アスファルトは、コンクリートに比べてデザイン性で劣りますが、一方で広い土地を施工する場合はコンクリートよりも費用を抑えられるというメリットがあります。

また、一般家庭の駐車場では、アスファルトを使用している場面をあまり見かけないかもしれませんが、その背景にはアスファルトを扱っている業者が少ないという理由があります。

コンクリート

手入れのしやすさとデザイン性の高さから人気のあるのがコンクリートです。

月日が経つとヒビが入ったり、真夏は照り返しにより温度が上がったりしてしまうのが難点です。

とはいえ、ある程度の耐久性はあるので、多少のヒビなら気にせず使い続けることができます。

床面補修方法

マンション地下駐車場の床面補修には、以下のような方法があります

  1. 塗床材の使用: 耐久性を向上させるために、塗床材を使用して既存の床の下地を整え、塗布します。
  2. ひび割れの修復: ひび割れや亀裂が見られる場合は、修繕を行い、土台を完成させた後、コテを使って塗床材を塗り、樹脂を重ねて耐久性を強化します。
  3. 防水性と防滑性の向上: 防水性と防滑性に優れた専用床材を使用することで、駐車場用床材としての性能を向上させます。
  4. コンクリート補修: コンクリートの補修には、クラックや欠落部分を専用の補修材やシーラントで修復する方法が一般的です。

    これらの方法を用いることで、マンション地下駐車場の床面を効果的に補修し、安全性と耐久性を向上させることができます。

工事

駐車場の塗床工事では、補修作業でしっかりと既存の床の下地を整えたあと、塗床材を塗布して耐久性を向上させます。

まず既存の床の劣化状態を調査し、古い塗膜や劣化した下地を全て削り取り洗浄します。

そしてひび割れや亀裂が見られる場合は修繕を施して、きちんと土台を完成させた後、コテを使って塗床材を塗り、用途に合わせて樹脂を重ね、耐久性を強化します。

仕上げにコーティング材を塗布することで、劣化による剥離を防止、さらに耐久性や塗床材の効果を強化させて完成です。


作業のフロー

現場の劣化状態調査→見積もり下地処理プライマー塗布塗床樹脂剤塗布仕上げコーティング工事完了引き渡し 

下地処理

既存床材または劣化して脆弱になっている部分を研削機で除去し、ワイヤーポリッシャーなどで清掃する。

プライマー塗布

清掃後、専用の塗布器を用いてプライマーを塗布する。アスファルトなどの凹凸のある下地にはブラシを用いる。

下地材塗り付け(防滑仕上げのみ)

金ゴテを用いて所定の厚みで塗り付ける。

層間プライマー塗布(防滑仕上げのみ)

専用の塗布器を用いて層間プライマーを塗布する。

上塗材塗り付け

速硬性の材料のため、塗り継ぎ間隔に注意しながら塗り付ける。

トップコート塗布

上塗材が十分乾燥してから、トップコートを塗布する。


ひび割れ修復

コンクリートは硬くて丈夫である分、乾燥してしまうと中の水分が蒸発して乾燥による収縮が起き、ひび割れが生じやすくなります。
また、急激な気温の変化も、その原因の一つです。
亀裂やひび割れはクラックと呼ばれ、そのクラックの大きさによって危険性が分かれています。

[ヘアクラック]

幅0.3mm以下、長さ4mm以下ののひび割れをヘアクラックと呼びます。

髪の毛が入るようなサイズの小さなひび割れの事を指すので、その様な名前がつけられました。


[構造クラック]

ヘアクラック以上の幅、長さを越えるひび割れを構造クラックと呼びます。

構造クラックは、建物の内部にまで影響する深刻なひび割れです。

ひび割れ修復工事では、この構造クラックはもちろん、大きくなりかねないヘアクラックから、ひび割れが起きそうなコンクリートの劣化部分まで修繕を施します。


バジリスクによる修復

バジリスクとは、バクテリアの代謝活動を利用した液状のひび割れ補修剤で、コンクリート材に含まれる微生物がコンクリートのひび割れを自動的に修復する特徴を持っています。
1回の塗布で0.2~0.3mmのひび割れ を、2-3回の塗布で最大0.6mmのひび割れを修復することができます。
コンクリート中に特殊なバクテリアと栄養分のカルシウム有機塩を混入することで、コンクリートにひび割れが発生した際にバクテリアの代謝活動によって損傷を自動的に修復するようになっています。

エポキシ樹脂による修復

構造クラックの中でも大きいひび割れに対しては、エポキシ樹脂を用いて直接樹脂の注入を行います。
強度は比較的バジリスクより強いため、ひび割れを徹底的に修復したい場合にはとても適しています。
地下の防水工事や、外壁工事、トンネル工事など様々な工事においてもエポキシ樹脂は施されるため、しっかりとした防水効果が見られます。

アクリル樹脂による修復

アクリル樹脂は、エポキシ樹脂と比べて変異原生物質や環境ホルモン物質を含まないため、比較的に環境に配慮して工事を施工することができます。
水濡れしたひび割れ箇所にも対応できるため、エポキシ樹脂で補修できない漏水被害が見られるひび割れ箇所にぴったりの樹脂です。

塗床材

駐車場塗床工事で用いる塗料は、主にMMA樹脂系塗床材を使用します。
床に厚膜防水加工を施す場合は塗材をコテやローラーなどでムラなく塗布しその上に専用の上塗り塗材でコーティングします。
厚膜防水とはビルの屋上やベランダなどで多く用いられる防水工法です。
液体素材の為、施工面の起伏にかかわらず密着する事ができます。

MMA樹脂系塗床材の特徴

  1. 光沢がある
  2. 優れた耐重量性
  3. 硬化速度が速い、工期が短い
また駐車場の状態や仕上がりの好みに合わせて、MMA樹脂系塗床材以外の塗床材を用いる場合もあります。
その他の塗床材としては、水硬性ウレタン樹脂系塗床材・硬質ウレタン系塗床材・エポキシ樹脂系塗床材などがあります。

水硬性ウレタン樹脂系塗床

特徴:耐熱水性、耐薬品性、耐荷重性に優れていて施工中の臭気が少ない。

硬質ウレタン系塗床

磨耗しにくく、耐久性、耐衝撃性が高く、光沢があり、意匠性に優れている。

エポキシ樹脂系塗床

光沢があり、耐薬品性に優れている。静電気防止効果がある。

費用・単価

施工規模や床の状態によって変動しますが、以下は目安となる参考価格です。

【参考価格】記載の価格は300㎡以上を基準とします。
  1. ウレタン樹脂薄膜仕上 :2,000円/1㎡~
  2. アクリル樹脂薄膜仕上:2,000円/1㎡~
  3. 亀裂(ひび割れ)補修:30,000円/10m~(10m~お受けできます)


マンション地下ピット

マンションの地下ピットは、給排水設備などの配管や電気の配線のメンテナンスのために地下に設けられた空間です。

その広さは建物と同じ面積で、高さは1.5~2Mほどが多いでしょう。

内部は仕上げがされていませんので、コンクリートがむき出しの状態です。

地下ピット内の内部は、長時間滞在することが想定されていないため換気扇や換気口等も設けられていません。

稀に人体に有害なガスが発生していることもあるため、居住者の方などが無闇に立ち入らないように出入り口には鍵がかけられています。

日常的な点検の対象になっていないため、めったに人が目にする場所でもありませんが、思わぬ不具合が隠れているケースが少なくありません。


漏水湧水

地下ピットで発覚する不具合として、コンクリートの施工品質にまつわるものが多くありますが、その他に「排水」に不具合があるケースもあります。

地下ピット内に水が溜まり、プールのような状態になります。

原因として考えられる主なものが、湧水と漏水です。

湧水

コンクリートの小さな隙間から、地下水が染みだしているケースです。

漏水

コンクリートのひび割れから地下水が侵入したり、設備配管などから漏水を起こしているケースです。

水たまりになってしまった地下ピットに、長期間水が溜まった状態にあると、もしそこに設備の配管や配線などの設備があると劣化を早めることになります。

コンクリートは乾燥収縮によって微細なひび割れが少なからず発生しますが、このひび割れから水分が浸透していき、内部鉄筋の錆を誘発することにもなります。

また、錆びによりコンクリート内の鉄筋の体積が増え、周囲のコンクリートを押しのけるように破壊させてしまう爆裂を起こすことにも繋がり、建物の耐久性にも影響を及ぼす恐れもあります。

地下ピットの異常は臭い

カビ、微生物の繁殖などを引き起こし、通気口(ピット内の空気の出入りがある筒状の口)からの悪臭や、虫の発生などが起きることもあります。

通気口は、通常あまり目立たない建物の外壁に沿った場所に、地面から突出して配管が立ち上がっています。

地下ピットは普段は居住者が出入りする場所ではないので、通気口からの悪臭などでその異変に気が付くこともあるのです。

地下と地上をつなぐ通気口が隣地境界近くにある場合、通気口から悪臭が周囲に漂い、近隣の方から苦情が来てしまうケースもあります。

一定程度水が溜まると自動的に排水されるように対策を講じる必要があります。

一時的に水が発生したとしても、各ピットは連通管で繋がっており、本来なら勾配によってたまった水が流されていきます。最終的には下の写真のような釜場(水が集積される一段低くなった場所)まで流れる仕組みになっています。


水が自然に釜場に流れるよう、床面には勾配がつけられていますが、水を通す連通管が床面から上がった位置にあると、水位がその位置までこないと流れないことになり、常に水が溜まっている状態になってしまいます。

自然に排水されるためには、床面と同レベルに連通管が設置されなければなりません。

この場合、施工時の連通管の不適切な設置によるものと思われます。

悪臭や害虫などが発生する前に適切に排水される措置が必要です。

できれば床面の適切な勾配による処置が望ましいですが、場合によっては釜場の増設などを検討する必要があるかもしれません。