ガルシア・マルケスの「予告された殺人の記録」を読んで

ガルシア・マルケスの「予告された殺人の記録」を読み終えました。

以前に読んだ記憶がありますが、あらためて読み通してみました。

かなり薄い単行本のため、読みやすい短編ではありますが、登場人物が多いため、読後に満腹感があります。

ガブリエル・ガルシア=マルケスの『予告された殺人の記録』は、ある青年の死が町中の人々に知られながらも防げなかった悲劇を描いた小説です。

実際に起きた名誉殺人をベースに、人々の悪意や共同体の不条理さがミステリアスな手法で暴かれていきます。


物語の骨子は以下の通りです。

町にやってきた著名な将軍の子息であるバヤルド・サン・ロマンと結婚した美女・アンヘラ・ビカリオが、結婚したその夜のうちに、バヤルド自身によって、彼女の母親の元へ連れ戻されたことが事件の発端となりました。

それは、アンヘラが、処女でなかったためでした。

アンヘラは、母親に問い詰められて、相手はアラブ系の美青年サンティアゴ・ナサールだったことを告白しました。

アンヘラ・ビカリオの双子の兄たちは、妹を辱めた、サンティアゴ・ナサールを名誉のため殺害すると町で会う人ごとに公言して回ります。

この殺害の予告はたちまち町中に行き渡りますが、誰も彼に本気で警告せず、警察や神父も成り行きを放置してしまいます。

アンヘラの告白が真実かどうかも曖昧なまま、何人もの街の人がビカリオ兄弟が、命を狙っていることをサンティアゴ・ナサールに伝えようとしました。

しかし、多くの偶然とすれ違いが重なり、サンティアゴ・ナサールは死ぬ直前までそれを知りませんでした。

最後のその時に、サンティアゴ・ナサールの母親は、扉越しに双子のビカリオ兄弟が刃物をかざして家に向かってくるのを見て、家の正面の扉を閉ざしました。

彼女には、別の角度から、息子が扉に向かって駆けてくるのは見えませんでした。

サンティアゴ・ナサールの声はしていましたが、母親は、息子が2階の寝室のバルコニーからビカリオ兄弟を罵っているのだと勘違いしていました。

あと数秒で家の中へに逃げ込む直前で扉は閉ざされ、双子のビカリオ兄弟は予告通りサンティアゴ・ナサールを殺害したのでした。

この小説には後日談があります。

後に釈放されたビカリオ兄弟の内、兄の方は許嫁と結婚し、父親の店を継いで腕の良い金銀細工の職人となりました。

弟の方は、3年後、再び軍隊に入り、曹長まで昇進し、ある日ゲリラ軍の支配地域を進軍中に行方が知れなくなりました。

バヤルド・サン・ロマンは、新居となるはずの丘の上の屋敷で急性アルコール中毒で倒れ、ハンモックの担架で運び出されました。

アンヘラ・ビカリオは、母親に町からひっそりと連れ出され、インディオの住む僻地の辺鄙な村にある海に臨んだとある家で、ミシンを操り刺繍をする日々を送っていました。

悲劇から23年後、鉄の縁の眼鏡をかけ、髪は黄色がかった灰色になっていました。

アンヘラ・ビカリオは、実家に戻されてから、バヤルド・サン・ロマンのことを想い続けていました。

長い年月が経ったある日、アンヘラ・ビカリオへ手紙を書いて送り始めました。

返事は一向に来ませんでしたが、彼女は毎週手紙を17年間休みなく書き続けました。

そして、8月のある真昼時、バヤルド・サン・ロマンは彼女の前に現れました。

すっかり太って、頭も薄くなりかけた彼は、「やってきたよ」と言います。

彼は旅行カバンの他にもう一つ同じものを持ってきており、そこには彼女が送った、2千通もの手紙が詰まっていました。

手紙は日付順に束ねられ、色付きのリボンで縛ってあったが、すべて封は切られていませんでした。